おしむら歯科ブログ BLOG OSHIMURA

顎関節症は矯正で治る?歯並び・噛み合わせとの関係と治療の順番

訪問歯科では何ができる?自宅で支える「食べる力」とお口の健康

▸ 顎の痛みと歯並びが、同時に気になっていませんか?

 

こんにちは。おしむら歯科・こども矯正歯科クリニック院長の押村侑希です。

「口を開けると顎がカクカク鳴る」
「朝起きると、顎の周りが重く感じる」
「大きく口を開けようとすると痛い」
「顎の違和感と一緒に、歯並びや噛み合わせも気になっている」

このようなお悩みから、「歯並びを矯正すれば顎関節症も治るのではないか」と考える方もいらっしゃるのではないでしょうか。

顎関節症は決して珍しい症状ではありません。日本顎関節学会の「顎関節症治療の指針2025」では、2023年に行われた全国調査で、顎関節症が疑われる方は23.7%だったと報告されています。国民の4~5人に1人が、顎関節症に関連する症状を持っている可能性があるという結果です。

結論からお伝えすると、歯並びや噛み合わせの状態によっては、顎関節症の治療後に矯正治療を検討することがあります。

ただし、顎関節症のすべての方に矯正治療が必要なわけではありません。また、「歯並びを整えれば顎関節症が必ず治る」というものでもありません。

大切なのは、まず顎の痛みや動かしにくさを診査し、その原因や悪化させている要因を確認したうえで、適切な順番で治療を進めることです。

この記事の要点まとめ

  • 顎関節症は、歯並びや噛み合わせだけで起こる病気ではありません
  • 顎関節症の治療では、まずセルフケアや運動療法、スプリント療法などの保存的な治療を行います
  • 顎の状態が安定した後も大きな噛み合わせの問題が残る場合は、矯正治療が選択肢になることがあります
  • 矯正治療は、顎関節症を治すことだけを目的に行うのではなく、噛む機能や歯列全体のバランスを整えるために検討します
  • おしむら歯科では、顎関節、噛み合わせ、歯並び、舌や唇の使い方まで総合的に確認します

▸ 顎関節症は「歯並びだけ」が原因ではありません

 

 顎関節症の代表的な症状

 

日本顎関節学会では、顎関節症の代表的な症状として、次の3つを挙げています。

  • 顎や顎を動かす筋肉が痛む
  • 口を大きく開けにくい
  • 顎を動かすと音がする


顎関節症には、顎を動かす筋肉に痛みが出るもの、顎関節自体に痛みが出るもの、関節の中にある関節円板がずれるもの、顎関節の骨に変化が生じるものなど、複数の病態が含まれます。

同じ「顎がカクカクする」という症状でも、状態や治療の必要性は一人ひとり異なります。

そのため、症状だけで自己判断するのではなく、問診、顎の動き、痛みが生じる場所、開口量などを確認し、顎関節症と似た症状を示すほかの病気がないかを調べることが重要です。症状によっては、レントゲンやCT、MRIなどの画像検査が必要になる場合もあります。

 

 噛み合わせは、いくつもある要因の一つです

 

以前は、「噛み合わせの悪さが顎関節症の主な原因」と考えられることもありました。

しかし現在では、顎関節症は一つの原因だけで起こるものではなく、生活環境、行動、身体的な特徴、心理的・社会的な要因などが重なり、その方が耐えられる範囲を超えたときに症状が現れると考えられています。

たとえば、次のような要因です。

  • 歯ぎしりや食いしばり
  • 日中に上下の歯を接触させる癖
  • 頬杖やうつ伏せ寝
  • 長時間のデスクワークや不良姿勢
  • 硬い食品や長時間の咀嚼
  • ストレスや対人関係の緊張
  • 睡眠の問題
  • 顎関節の形や噛み合わせ


噛み合わせも関係する可能性のある要因の一つですが、歯並びが悪いという理由だけで、顎関節症の原因が噛み合わせにあると断定することはできません。



▸ 顎関節症の治療で、最初から矯正をするわけではありません

 

 まずは顎への負担を減らし、症状を安定させます

 

顎関節症の標準的な治療では、まず身体への負担が少なく、元の状態に戻すことができる保存的な治療を行います。

具体的には、次のような方法です。

  • 顎関節症の状態や原因についての説明
  • 硬い食品や長時間の咀嚼を避ける生活指導
  • 頬杖、食いしばり、姿勢などの見直し
  • 顎の筋肉のストレッチや運動療法
  • 痛み止めなどを用いる薬物療法
  • マウスピースを使用するスプリント療法

スプリント療法では、歯列全体を覆うマウスピース型の装置を使用し、歯ぎしりや食いしばりによる筋肉の緊張や顎関節への負担を軽減することを目指します。

近年まとめられた顎関節症の標準治療に関するキーポイントでも、最初に選択する治療は、説明やセルフケア、認知行動的な対応、一時的な口腔内装置、痛みの管理などを組み合わせた保存的な治療であるべきとされています。

顎関節症を治すことだけを目的に、いきなり歯を削ったり、噛み合わせや下顎の位置を大きく変えたりする治療は、標準的な初期治療として支持されていません。

 

 症状が落ち着いた後に、もう一度噛み合わせを確認します

 

顎が強く痛んでいるときや口を開けにくいときは、無意識に痛みを避けるような顎の動かし方になることがあります。

その状態だけをもとに歯を動かしてしまうと、顎の安定した位置や、本来の噛み合わせを正しく評価できない可能性があります。

そのため、まず顎関節症の基本治療を行い、痛み、開口量、顎の動きなどを再評価します。必要な場合は専門的な検査や治療を行い、顎の状態が安定してから、歯並びや噛み合わせに対する治療の必要性を判断します。

 

▸ 矯正治療が選択肢になるのは、どのような場合?

 

 顎の症状が落ち着いた後も、大きな噛み合わせの問題が残る場合

 

日本顎関節学会の治療指針では、顎関節症の基本治療や専門治療を行った後、噛み合わせ、咀嚼、発音などの口腔機能を回復する必要がある場合に、修復治療や補綴治療を行うとしています。

さらに、大きな咬合不全が残っている場合には、矯正歯科治療によって噛み合わせの異常を改善し、口腔機能を回復できる場合があると説明されています。

矯正治療が検討される可能性があるのは、たとえば次のようなケースです。

  • 顎関節症の症状が安定しても、しっかり噛める位置が限られている
  • 歯の位置が顎の自然な動きを妨げていると考えられる
  • 顎を開け閉めするときに左右どちらかへ大きくずれる
  • 交叉咬合、開咬、深い噛み合わせなど、大きな咬合異常がある
  • 歯のガタつきと噛みにくさの両方に悩んでいる
  • 顎関節症とは別に、歯並びや口元を改善したいという希望がある

ただし、これらに当てはまるからといって、必ず矯正治療が必要になるわけではありません。

顎の状態、歯列、骨格、歯周組織、生活習慣などを総合的に確認したうえで、矯正治療によって得られる利点と治療に伴う負担を比較して判断します。

 

 矯正治療の目的は「顎関節症を治すこと」だけではありません

 

顎関節症のある方に矯正治療を行う場合も、治療の目的は単に顎の音や痛みをなくすことだけではありません。

歯並びや噛み合わせを整えることで、

  • 左右の歯でバランスよく噛める状態を目指す
  • 顎を無理なく動かせる環境を整える
  • 咀嚼や発音などのお口の機能を回復する
  • 歯磨きをしやすくし、将来のむし歯や歯周病予防につなげる
  • 口元や笑顔の印象を整える


といった、口腔機能と審美性の両方を考えます。

「顎関節症を治すためだけに矯正する」のではなく、「顎の状態を安定させたうえで、残っている歯列や噛み合わせの問題を整える」という順番が大切です。

 

▸ おしむら歯科では、顎関節・お口の機能・歯並びを順番に確認します

 

 顎の症状だけでなく、生活習慣や姿勢まで伺います

 

おしむら歯科では、顎の痛みや違和感について、次のような点を確認します。

  • いつから、どのような動きで痛むのか
  • 朝と夜で症状に違いがあるか
  • 顎から音がするか
  • どの程度まで口を開けられるか
  • 歯ぎしりや食いしばりがないか
  • 頬杖や片側噛みなどの癖がないか
  • 長時間のデスクワークやスマートフォン使用がないか
  • 歯並びや噛み合わせに気になる点がないか

必要に応じてCTを使用し、顎の骨、歯の位置、歯根、噛み合わせなどを三次元的に確認します。矯正治療を検討する場合には、セファロや口腔内スキャナーなども用いて、歯列と顎の骨格を多角的に分析します。

顎関節内部の関節円板など、軟らかい組織の詳しい評価が必要な場合はMRIが適しているため、症状に応じて専門医療機関との連携を検討します。

 

 舌の位置や飲み込み方も、必要に応じて確認します


顎の動きや歯並びには、舌、唇、頬などの筋肉の使い方が関係していることがあります。

たとえば、舌が低い位置にある低位舌や、飲み込むたびに下顎や前歯へ偏った力がかかる異常嚥下癖が認められる場合です。

おしむら歯科では、症状だけを一時的に抑えるのではなく、歯列や顎の状態に影響している口腔機能上の問題がないかも確認します。必要な場合は、舌や唇の使い方を整える口腔筋機能療法などを先に行い、顎の動きや噛み合わせの変化を確認したうえで、矯正治療へ進みます。

当院では、顎関節症、下顎の叢生、低位舌を併せ持つ成人患者に対し、まず口腔筋機能療法とマウスピース型装置で舌や嚥下の機能を整え、その後にアライナーとブラケットで歯列を調整した症例があります。顎関節症の症状だけを見るのではなく、機能を整えてから形態を調整するという当院の治療方針を示す一例です。

当院が大切にしているのは、「機能の是正から始め、必要に応じて形態を整える」という順序です。顎関節症を矯正治療の入口として利用するのではなく、検査の結果、本当に歯列や噛み合わせの改善が必要な方に矯正治療をご提案します。

 

▸ 矯正治療をすれば、顎関節症は必ず改善する?

 

矯正治療によって歯並びや大きな噛み合わせの異常を整え、咀嚼などの口腔機能を回復できる場合があります。

しかし、顎関節症はストレス、食いしばり、睡眠、姿勢、疼痛への感じ方など、さまざまな要因が重なって起こります。そのため、歯並びを整えたとしても、顎の痛みや関節音が必ず改善するとは限りません。

また、顎関節症は矯正治療や補綴治療など、一般的な歯科治療の途中に症状が現れることもあるとされています。矯正治療中も顎の痛み、開口量、顎の動きなどを定期的に確認し、必要に応じて治療計画を調整することが重要です。

おしむら歯科では、矯正治療による顎関節症の改善を保証するのではなく、

「現在の顎の症状には、どのような対応が必要なのか」
「歯並びや噛み合わせには、別途治療が必要なのか」

を分けて考えます。

そのうえで、二つの問題が関係していると判断した場合には、顎関節症の治療と矯正治療を適切な順番で組み合わせます。

■よくある質問

Q. 顎がカクカク鳴るだけでも、矯正治療が必要ですか?

A. 顎の音がするという理由だけで、矯正治療が必要になるわけではありません。痛み、開けにくさ、食事への影響、顎の動き、噛み合わせなどを確認して判断します。音に加えて痛みや開口障害がある場合や、以前より口を開けにくくなった場合は、一度歯科医院へご相談ください。


Q. 顎が痛い状態で、すぐに矯正相談を受けてもよいですか?

A. ご相談いただくことは可能ですが、強い痛みや開口障害がある場合は、まず顎関節症の診査と症状を安定させる治療を優先します。顎の状態を再評価し、歯列や噛み合わせの治療が必要と判断した場合に、矯正治療の検査や計画へ進みます。


Q. マウスピースで痛みが落ち着けば、それで治療終了ですか?

A. スプリント療法によって顎への負担が軽減し、日常生活に支障がなくなれば、セルフケアを続けながら経過を観察することがあります。一方、症状が落ち着いた後も大きな咬合不全や噛みにくさが残る場合には、補綴治療や矯正治療などを検討することがあります。

 

Q. 何歳までなら、矯正治療を受けられますか?

A. 矯正治療は年齢だけではなく、歯、歯ぐき、骨格、顎関節、噛み合わせなどの状態を確認して適応を判断します。おしむら歯科では、マウスピース矯正、ワイヤー矯正、部分矯正などから、検査結果と生活スタイルに合う方法をご提案しています。

 

▸ 顎の症状と歯並び、どちらも一緒にご相談ください

 

顎関節症の症状があると、

「マウスピースを作ればよいのか」
「歯並びを矯正した方がよいのか」
「しばらく様子を見てもよいのか」

と迷うことがあると思います。

顎関節症の原因や悪化させている要因は、一人ひとり異なります。まずは、顎の痛み、動き、生活習慣、噛み合わせを確認することが大切です。

おしむら歯科では、顎関節症、歯ぎしり、食いしばりに関する診察と、成人矯正の両方に対応しています。顎の症状を確認したうえで、矯正治療が必要な場合には、マウスピース矯正やワイヤー矯正などの選択肢をご説明します。

「顎の痛みも歯並びも気になるけれど、どちらから相談すればよいかわからない」という段階でも構いません。

まずは現在のお悩みをお聞かせください。顎の治療と歯並びの治療を分けて考えながら、必要な方には適切な順番で両方を整える方法をご提案します。


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顎関節症・歯ぎしり食いしばり
おしむら歯科の顎関節症治療
押村侑希

歯科医師


おしむら歯科・こども矯正歯科クリニック

院長

押村侑希

▶ 監修者プロフィール

経歴
2001年 南山高校女子部卒業
2007年 愛知学院大学歯学部歯学科卒業
2017年 日本成人矯正歯科学会認定専門医コース修了(2年)
2018年 Dr John flutter(ブリスベン開業)診査診断コース修了
2019年 おしむら歯科・こども矯正歯科クリニック院長就任
2020年 愛知県歯科医師会食育推進委員、ユマニテク歯科衛生士専門学校非常勤講師
2023年 愛知県歯科医師会調査室参与
資格・所属学会
日本顎咬合学会認定医
日本成人矯正学会会員
日本摂食嚥下リハビリテーション学会会員
メタルフリー歯科学会 認定医