矯正は長い期間がかかる歯科治療です。
一貫した治療を行うためには、できることなら矯正中に転院はしない方が良いです。しかし、転勤や引っ越しなどによりやむを得ず転院しなければならないケースも。
どうしても矯正中に転院せざるを得ない場合は、今回お伝えするポイントを見極めながらご自身に合った転院先のクリニックを見つけることでスムーズに引き継ぎを行いやすくなります。
今回は「矯正中の転院ですべきこと」および「転院時の注意点」についてご説明します。
目次
■矯正中の転院では何をすれば良いの?
◎まずは転院することを現在の主治医にお伝えください
矯正中にやむを得ず転院する場合は、まずは転院することを現在の矯正の主治医にお伝えください。
患者様に本当に転院が必要かどうかをご確認していただいた上で、転院後に矯正を再開するために必要なカルテや歯型、デジタルデータなどの資料と引き継ぎ状をご用意いたします。
必要な資料と引き継ぎ状があれば転院前・転院先のそれぞれの歯科医師のあいだで引き継ぎを進められ、転院先のクリニックでスムーズに矯正を再開させやすくなります。
■できることなら、矯正中に転院はしない方が良いです
◎同じクリニックに通い続けられれば、転院手続きをしなくて済みます
矯正はむずかしい歯科治療です。けっして、「矯正治療はどこで受けても同じ」ではありません。矯正は術者である歯科医師の知識や技術に治療結果が左右されます。かならずしも、転院先の歯科医師が現在通っているクリニックと同じレベルの矯正治療を行えるとは限りません。
現在のクリニックに通い続けられるのであれば、できることなら矯正中に転院はしない方が良いです。同じクリニックに通い続けられれば転院手続きをしなくて済み、1つの歯科医院にて一貫した矯正治療を受けられます。
できれば同じクリニックに通い続けるのがベストですが、患者様にもさまざまなご事情があります。矯正中、遠方への転勤や引っ越しなどでやむを得ず転院が必要になることも。
矯正中、やむを得ず転院する場合は次の項でご説明する3つのポイントに注意することで転院先にてスムーズに矯正を再開させやすくなります。注意点に気をつけて引き継ぎを行うことにより、現在治療を受けているクリニックとのトラブルも起きにくくなります。
■矯正中に転院する場合の注意点
転院時のポイント① 現在治療を受けているものと同じ方式、同じ種類(同じブランド)の矯正治療を行えるクリニックを選ぶ
矯正治療の方式は大きく分けて2種類あります。1つは従来からあるワイヤー矯正、もう1つはマウスピース矯正です。
治療方式のほか、表側矯正、舌側矯正(裏側矯正)など、ワイヤー矯正は装置をつける歯の位置によって種類が異なります。また、マウスピース矯正はインビザライン以外にもクリアコレクト、キレイラインなどのブランドが存在し、ブランドによって特徴(機能性、対応できる症例)が異なります。
矯正の方式やワイヤー矯正の種類(ワイヤー矯正の場合)、マウスピース矯正のブランド(マウスピース矯正の場合)をきちんと確認せずに転院先のクリニックを選んでしまうと、転院先によっては「ウチではワイヤー矯正はやっていません」「舌側矯正には対応できません」「当院ではキレイラインは取り扱っておりません」と言われてしまい、矯正治療を引き継げなくなることがあります。
矯正治療を引き継げなくなるトラブルを防ぐため、転院の際はかならず以下を調べておきましょう。
<転院の際に確認すべきこと>
・現在治療を受けているものと同じ方式(ワイヤー矯正、マウスピース矯正)の矯正治療を行っているか
・ワイヤー矯正の場合、表側矯正、舌側矯正(裏側矯正)、ハーフリンガル矯正など、同じ種類による治療を行っているか
・マウスピース矯正の場合、インビザライン、クリアコレクト、キレイラインなど、同じブランドによる治療を行っているか
転院時のポイント② 日本矯正歯科学会、日本顎咬合学会など、共通の学会に籍を置く歯科医師が在籍するクリニックを選ぶ
日本には日本矯正歯科学会や日本顎咬合学会など、認定医制度を持ついくつかの矯正学会が存在します。
矯正治療はあごの骨の代謝(吸収と造骨)を利用して歯を動かす治療法です。歯が動く原理は同じのため、どの学会でも矯正に関する基礎的な部分は同様の学習内容となります。
基礎的な部分の学習内容は同じですが、学会にはそれぞれ特有の「色」があり、学会ごとに矯正治療のやり方に多少の差が出る場合も。
<学会ごとの矯正治療に対する特色の例(※)>
日本矯正歯科学会
歯並びだけではなく、あごの位置を含め、お顔全体のパーツの位置関係を考慮した矯正治療を行う。
日本顎咬合学会
歯並びを整えることに加え、しっかり噛むことができ、歯やあごの骨に負担がかからないよう噛み合わせを最大限に考慮した矯正治療を行う。
(※)一例です。上記以外にも、さまざまな治療方針が存在します。
矯正治療を受けており現在の歯科医師に満足している・問題がない場合は、その歯科医師が所属する学会と同じ学会に籍を置く歯科医師が在籍するクリニックを転院先に選ぶことで、現在のクリニックに近い水準の矯正治療を受けられる可能性を高められます。
転院時のポイント③ 残っている治療分の返金について尋ねる
矯正中に転院する場合、日本矯正歯科学会では残っている治療分の返金を行うことを定めています。返金額は矯正治療を始めたばかりの段階では7~8割程度戻ってくるケースが多く、矯正が進んで残りの治療分が少なくなると共に返金額が減っていきます。矯正の終わりごろに転院した場合はほとんど治療費が払い戻されないケースも。
なお、上記は日本矯正歯科学会が定める返金の基準です。クリニックによっては治療の進み具合を問わず、一切の返金をしないところもあります。
矯正中に転院をするときは現在治療を受けている歯科医院にどの程度、残りの治療分が返金されるのか尋ねましょう。また、転院の際に返金トラブルを起こさないようにするため、矯正治療を受ける前には歯科医師に転院時の返金システムについて質問し、確認しておくことをおすすめします。
【矯正中に転院が必要な場合はお早めにお伝えください】
矯正中、転院が必要な場合は歯科医師までお早めにお伝えください。
転院先でスムーズに矯正を再開するため、患者様のデータの引き継ぎなど、最大限のご協力をさせていただきます。
無理に転院を引き留めたり、データを出し惜しみして転院の邪魔をすることはけっしてありません。どうぞご安心を。