こんにちは。おしむら歯科 院長の押村侑希です。
先日、「マウスピースでなんで矯正ができるの?」をご紹介したところ、記事を読んだ患者様から「ワイヤー矯正とマウスピース矯正で歯の動き方は違うんですか」とご質問をいただきました。
そこで今回は「矯正方法ごとに異なる歯の動き方」についてご説明いたします。
ワイヤー矯正とマウスピース矯正の違いや補助処置による歯の動き方など、矯正をご検討されている方・矯正中の方の参考になる内容となっております。ぜひお読みください。
目次■矯正治療で歯が動くメカニズム
◎歯槽骨の吸収と造骨により、歯が動きます
歯科矯正は矯正装置で力をかけて歯を動かし、歯並びを整えます。これはどの矯正方法でも同じです。
矯正治療で歯が動くメカニズムは以下です。
①矯正装置で歯に力をかけることで、力をかけた方向の歯根膜が圧迫される。
②圧迫された歯根膜の血管から破骨細胞が生み出され、力をかけた方向の歯槽骨を溶かす(歯槽骨の吸収)。
③溶かされた歯槽骨の分だけ歯が動く。
④力をかけた方向と反対側の歯根膜から造骨細胞が生み出され、歯が動いて空いた分の歯槽骨を埋める。
⑤1~4の「歯槽骨の吸収と造骨」をくりかえし、歯が少しづつ動いて歯並びが整っていく。
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上記は「マウスピースでなんで矯正ができるの?」でご説明した内容のおさらいです。さらに詳しく矯正治療で歯が動く理由について知りたい方は、リンク先のブログ記事をご参照ください。
■「歯体移動」と「傾斜移動」
矯正装置の種類に関わらず、矯正で歯が動くメカニズムは同じです。ただし、「歯の動き方」は矯正装置によって異なります。
歯の動き方は大きく分けて2種類あります。1つは歯根ごと歯を平行に動かす「歯体移動(したいいどう)」。もう1つは、歯根は動かさずに歯冠(しかん:歯ぐきから上の歯の部分)を傾ける「傾斜移動(けいしゃいどう)」です。
◎ワイヤー矯正は「歯体移動」ができます
ワイヤー矯正は歯にブラケット装置を接着し、ブラケットに通したワイヤーを強く締めて歯を動かします。歯にかける力が強いため、ワイヤー矯正は歯根ごと歯を平行移動させる歯体移動ができます。
◎マウスピース矯正は「傾斜移動」が中心です
ワイヤー矯正と比べ、マウスピース矯正は歯にかける力がマイルドです。やわらかい素材のマウスピースを使うため歯にかける力が弱く、原則として歯体移動は行えません。マウスピース矯正は歯冠のみを傾ける傾斜移動を中心に歯並びを整えます。
◎インビザラインは「歯体移動」が可能
マウスピース矯正は傾斜移動が中心ですが、インビザラインは例外です。インビザラインは独自技術の「アタッチメント」を使うことで歯を動かす力(矯正力)をUPでき、歯体移動を行えます(※)。
(※)強い力をかけられるワイヤー矯正と比べ、インビザラインで
動かせる歯体移動の距離には限りがあります。
{インビザラインのアタッチメントは複雑な歯の動きにも対応可能}
アタッチメントとは、インビザラインが開発した独自技術です。アタッチメントを使った治療では歯の表面に白いポッチ(凸)を接着し、ポッチに合わせてマウスピースに窪み(凹)を作ります。歯につけたポッチとマウスピースの窪みを合わせることでがっちりとマウスピースがはまって歯を動かす力が高まり、以下のような複雑な歯の動きにも対応できるようになります。
・歯を舌側に引っ張り出す「挺出(ていしゅつ)」
・歯を歯ぐき側に押し下げる「圧下(あっか)」
・歯を回転させる「回転(かいてん)」
■アンカースクリューについて
◎小さなネジを固定源にして歯を動かします
アンカースクリューとは、小さなネジを歯槽骨に埋め込み、ネジを固定源にして歯を動かす方法です。
通常の矯正装置では対応しにくい以下のような歯の動きを行いたい場合、アンカースクリューを使用することがあります。
・歯を歯ぐき側に押し下げる「圧下(あっか)」
・前歯を後ろに引っ張る「牽引(けんいん)」
・奥歯を後ろに移動させる「遠心移動(えんしんいどう)」
ワイヤー矯正、マウスピース矯正、どちらの矯正方法でもアンカースクリューが用いられます。
アンカースクリューが用いられる症例には
・開咬(上下の前歯が噛み合わない)
・過蓋咬合(上の前歯が下の前歯に大きく覆いかぶさる)
・受け口(下あごの前歯が前に突き出る)
などがあります。
■ワイヤー矯正、マウスピース矯正、それぞれの特徴
◎ワイヤー矯正は「歯を大きく動かす」のが得意
ワイヤー矯正はブラケットに通したワイヤーで歯を締めます。固定式の矯正装置で歯にかける力が強いため、軽度~重度の歯並びの乱れに幅広く対応可能です。
重度の出っ歯や重度の受け口、重度の叢生など、抜歯をして歯を大きく動かす症例はワイヤー矯正で治療を行うことが多いです(※)。
(※)歯並びの乱れ方によってはインビザライン単体で治療できるケースが
あります(またはワイヤー矯正とインビザラインを併用)。
顎の骨格が原因の歯並びの乱れは外科的矯正が必要です。
◎マウスピース矯正は「歯列を揃える」「歯並びの微調整をする」のが得意
マウスピース矯正は歯を大きく動かすのが苦手です。重度の出っ歯や重度の受け口、4本以上の歯を抜く抜歯矯正など、歯を大きく動かす必要がある症例はあまり得意ではありません。
{インビザラインは軽度~重度の歯並びの乱れに対応}
インビザラインはアタッチメントをつけることで矯正力がUPします。矯正力を高められるインビザラインであれば、ほかのマウスピース矯正では治せない重度の歯並びの乱れに対応できることがあります(※)。
(※)重度の出っ歯や重度の受け口など、歯を大きく後ろに動かす必要がある
症例はインビザライン単体での治療が難しい場合があります。
マウスピース矯正は歯を大きく動かすのが苦手な代わりに、歯列を揃えたり歯並びの微調整をするのが得意です。
マウスピース矯正は歯を歯ぐき側に押し下げる圧下も比較的スムーズに行えます(マウスピースを装着してお口を閉じているだけで自然と歯が押し下げられるため)。
【お1人お1人の患者様に合った矯正方法をご提案いたします】
矯正治療で歯が動くメカニズムはどの矯正方法も変わりません。ただし、矯正方法によって得意・苦手な症例があるため、インビザラインだけで対応できない場合はワイヤー矯正に変更したり、ワイヤー矯正とインビザラインを併用して治療を行うことがあります。
矯正を行う際には患者様の歯や顎の状態、歯並びの乱れ方に適した矯正方法を選ぶことが重要です。
「自分の歯並びがインビザラインで治せるか知りたい」
「どの矯正方法を選べば良いか分からない」
など、歯並びの乱れや矯正方法でお困りの方は当院までお気軽にご相談ください。相談費は無料です。カウンセリングでは日本矯正歯科学会の矯正認定医が現在のお悩みをお伺いし、お1人お1人の患者様に合った矯正方法をご提案させていただきます。