こんにちは。おしむら歯科 院長の押村侑希です。
当院ではワイヤー矯正に加え、マウスピース矯正のインビザライン、小児矯正のマイオブレースを行っています。
<成人矯正(大人の矯正)>
・ワイヤー矯正
・マウスピース矯正(インビザライン)
<小児矯正(子どもの矯正)>
・0期・1期治療:マイオブレース矯正(咬合誘導:予防矯正)
・2期治療:ワイヤー矯正、マウスピース矯正(成人矯正と同じ)
矯正はさまざまな治療方法があり、方式によって用いる装置が異なります。矯正治療を受けるときにはご自身に合った矯正方法・矯正装置を選ぶことが大切です。
今回は上記3つの矯正方法の中から、「成人矯正の歯の動かし方・矯正方式の違い」についてお話をさせていただきます。
目次
■成人矯正(機械的矯正)の歯の動かし方
◎「歯体移動」と「傾斜移動」
成人矯正および小児矯正の第2期治療では矯正装置を使って歯に力をかけ、歯を動かして歯並びを整えます。矯正装置で力をかけて歯を動かす矯正を「機械的矯正」と呼びます。
機械的矯正では以下の2種類の移動方法を利用し、歯を動かします。
・歯体移動
・傾斜移動
矯正装置で歯冠(しかん:歯ぐきから上の歯の部分)に力をかけて歯を動かす、という点ではどちらも同じです。違うのは「歯を根っこごと動かす(歯体移動)」か「歯冠だけを動かして根っこは動かさない(傾斜移動)」か、という点です。
歯体移動
歯体(したい)移動とは、歯を根っこごと水平に動かす方法です。
歯体移動は歯を根っこごと水平に動かしますが、歯冠と歯根を同時に動かすのではありません。まず最初に矯正装置で歯冠に力をかけて歯冠を傾斜移動させ、次に傾斜移動した歯冠の位置に合わせて歯根が動くことで歯が水平に移動します。
歯に力をかける→歯冠が傾斜移動する→歯冠に合わせて歯根が動く→歯冠と歯根が水平移動した状態になる
これが、歯体移動のメカニズムです。
傾斜移動
傾斜移動とは、歯の根っこは動かさず、歯冠部分のみを傾ける方法です。
矯正装置で歯冠に力をかける点は歯体移動と同じですが、傾斜移動は歯を傾かせるだけです。歯根は水平移動しません。
{傾斜移動は歯が斜めになったままでイイの?}
傾斜移動では歯根は動かさず、歯冠のみを傾けます。
このように聞くと「歯が斜めになったままで大丈夫なの?」と思いますよね。
確かに、歯が斜めになったままで矯正を終えるのは良くありません。
重度の歯並びの乱れで歯体移動をしなければならない症例に対し、マウスピース矯正で傾斜移動のみの治療を行ってしまうと歯冠だけは綺麗に並んでいるように見えても歯根が動かず、歯が傾いたまま矯正が終了してしまうケースがあります。
基本的に、歯は歯槽骨に対してできるだけ垂直に近い状態で植わっているのが望ましいです。歯槽骨に対して歯が斜めに傾いていると噛む力が弱まったり、噛んだときに伝わる力によって歯や歯ぐき、歯槽骨がダメージを受けやすくなります。
傾斜移動が中心のマウスピース矯正が適している症例は軽度~中程度の歯並びの乱れであり、「もともと歯が傾いている症例(子どもの頃のクセや遺伝、歯が抜けた状態を放置する、などの原因で歯が傾いて歯並びが乱れている症例)」です。もともと歯が傾いている場合は、マウスピース矯正で傾斜移動させることで本来あるべき位置=垂直方向に歯の傾きが治り、正常な状態に近づけられます。
■矯正装置の違い
歯体移動、傾斜移動。
矯正治療の歯の動かし方はこの2つに大きく分けられます。
この2つのうち、歯を根っこごと水平に動かす歯体移動を行えるのは固定式の矯正装置(ワイヤー装置)を使うワイヤー矯正だけです。
取り外し式の矯正装置(マウスピース)を使うマウスピース矯正はワイヤー矯正と比べて歯にかける力が弱いため、傾斜移動が中心となります。
◎ワイヤー装置
ワイヤー装置とは、固定式の矯正装置です。昔からあるワイヤー矯正で用いられます。
ワイヤー装置は以下の3つのパーツからできています。
・ブラケット 歯に力をかけるために歯の表面(または歯の裏側)に接着する装置
・ワイヤー 歯に接着したブラケットを締める針金
・モジュール ワイヤーをブラケットにつなぎ留めるゴム
ワイヤー矯正では歯に接着したブラケットに金属のワイヤーを通し、ワイヤーを締めて歯を動かします。ワイヤー装置はぎゅっとキツくワイヤーを締めるため、歯を動かす力が強いです。強い矯正力により、歯体移動で歯を根っこごと動かせます。
◎マウスピース
マウスピースとは、取り外し式の矯正装置です。インビザラインやキレイラインなどのマウスピース矯正で用いられます。
マウスピースはポリウレタンなどのやわらかい素材でできています。ワイヤー矯正と比べ、やわらかいマウスピースを使うマウスピース矯正は歯にかける力が弱いです。歯にかける力が弱いため、原則として歯根は動かせません(歯体移動ができない)。マウスピース矯正では歯冠のみを傾ける傾斜移動を行い、歯並びを整えます。
マウスピースでなんで矯正ができるの?
{歯体移動ができる「インビザライン」}
歯にかける力が弱いため、マウスピース矯正は傾斜移動がメインです。ただし、マウスピース矯正の中でもインビザラインだけは歯体移動を行えます。
インビザラインは「アタッチメント」という独自技術を持っています。アタッチメントとは歯の表面に白いポッチ(凸)を着け、ポッチに合わせてマウスピースに窪み(凹)を作り、ポッチに窪みを合わせてマウスピースを歯にかぶせることで歯を動かす力を高めるシステムです。
アタッチメントシステムにより、インビザラインは歯体移動のほかにも歯を歯ぐき側に押し込む「圧下(あっか)」、歯を舌側に引っ張り出す「挺出(ていしゅつ)」、歯を回転させる「回転(かいてん)」などの複雑な歯の動きにも対応できます。
革命的な機能であるアタッチメントシステムを持つインビザラインですが、ワイヤー矯正と比べると歯にかける力が弱いため、アタッチメント装着時に歯体移動で動かせる歯の移動距離には限界があります(抜歯矯正など、歯を大きく動かさなければならない場合にはワイヤー矯正が必要になることがあります)。
■矯正方法の選び方
◎幅広い症例に対応できるワイヤー矯正
ワイヤー矯正は固定式のワイヤー装置を使って矯正を行います。やわらかいマウスピースを用いるマウスピース矯正と比べ、ワイヤーで強く歯を締めるワイヤー矯正は歯を動かす力が強いです。
ワイヤー矯正は軽度~重度の歯並びの乱れに幅広く対応できます。抜歯をしてスペースを作り、歯を大きく動かす必要がある重度の出っ歯や受け口も対応可能です。
幅広い症例に対応できる一方、装置が目立ちやすい、食事や歯磨きのときに装置をはずせない、装置の装着時や調整時に痛みを感じる、などの点がワイヤー矯正のデメリットとして挙げられます。
◎取り外し可能で目立ちにくく、痛みが少ないマウスピース矯正
マウスピース矯正はいつでもマウスピースを取り外せる、目立ちにくい、ワイヤー矯正と比べて矯正中の痛みが少ない点がメリットです。
マウスピース矯正のデメリットは歯を動かす力が弱い点です。重度の歯並びの乱れはマウスピース矯正のみでは治せない場合があります。歯を抜いてスペースを作り、大きく歯を動かす必要がある抜歯矯正もマウスピース矯正が苦手とする症例です。
◎歯やあごの状態に合わせて適切な矯正方法を選ぶことが大切
最近はインビザラインやキレイラインなどのマウスピース矯正を受ける方が増えています。
しかし、矯正治療を受ける際、見た目や手軽さだけで矯正方法を選ぶのはよくありません。
マウスピース矯正では対応できない重度の歯並びの乱れや大きく歯を動かす必要がある抜歯矯正で無理にマウスピース矯正のみで治療を行ってしまうとしっかりと歯が動かなかったり、治療期間が長引いてしまうおそれがあります。
「目立ちにくいから」「取り外せるから」という理由だけでマウスピース矯正を選んだものの、いざ矯正を始めたらマウスピース矯正のみでは対応できず、矯正方法をワイヤー矯正に変更した…このようなケースは少なくありません(※)。
(※)重度の歯並びの乱れや抜歯矯正など、
マウスピース矯正のみで対応できない場合は矯正方法を変更して
ワイヤー矯正で治療を行う場合があります。
ワイヤー矯正で大きく歯を動かした後、仕上げの微調整を
マウスピース矯正で行うやり方もあります
(ワイヤー矯正とマウスピース矯正の併用)。
どのような矯正方法が自分に合っているかを見極めるためには、ワイヤー・マウスピース、それぞれの矯正方法について患者様ご自身がきちんと理解しておくことが大切です。
矯正開始前には矯正方法や矯正装置などの矯正に関する基本的な情報をチェックし、理解しておくようにしましょう。基本的な情報を理解した後は実際にクリニックを受診して歯並びやあごの状態をしっかりと調べてもらい、歯科医師のアドバイスを参考にしながら矯正方法を決めることをおすすめします。
【1人1人の患者様に適した矯正方法をご提案します】
「矯正を受けたいけど、どんな矯正方法を選べばよいか分からない」
「自分の歯並びの乱れにマウスピース矯正は行えるのか知りたい」
など、歯並びの乱れや矯正方法の選び方でお困りの方はお気軽にご相談ください。相談費は無料です。
カウンセリングでは現在の歯のお悩みをおうかがいするとともに歯科医師が歯並びやあごの状態を確認し、それぞれの患者様に適した治療計画および矯正方法をご提案させていただきます。