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乳歯・永久歯が生えてこない?「先天性欠如歯」「埋伏歯」について



「ウチの子、普通より歯が少ない気がする…」

「いつまで経っても、永久歯が生えてこない…病気かしら」


こんにちは。おしむら歯科 院長の押村侑希です。


上記のような、「普通よりも歯が少ない」「なかなか永久歯が生えてこない」場合は、お子さまの歯に何らかの異常が起きている可能性があります。


乳歯・永久歯が生えてこない主な原因としては、生まれつき歯(歯胚)そのものが存在しない「先天性欠如歯」、または、歯ぐきやあごの骨の中に歯が埋まって生えてこない「埋伏歯」が考えられます。


今回は、「乳歯・永久歯が生えてこない?「先天性欠如歯」「埋伏歯」」についてご説明します。


■先天性欠如歯とは


◎遺伝など、何らかの原因により、生まれつき乳歯・永久歯が生えてこないことがあります

先天性欠如歯(せんてんせいけつじょし)とは、遺伝など、何らかの原因により、生まれつき乳歯・永久歯が生えてこないことを指します。


◎何らかの原因で「歯胚」が作られず、歯の先天性欠如が起きることがあります

乳歯・永久歯、どちらも、歯根の下にある歯胚(しはい:歯の芽、歯の種)から歯が生えてきます。


先天性欠如で歯が生えてこない主な理由は、歯の芽である歯胚が作られないことが原因です。


歯胚が作られない原因ははっきりとはわかっていません。遺伝、薬の副作用、栄養不足などが関係しているのではないかと推測されています。


{乳歯・永久歯の歯胚が作られる時期・歯が生える時期}


乳歯・永久歯、どちらの歯胚も、お母さんのお腹の中にいる胎児のときに作られ始めます(※)。お母さんのお腹の中に赤ちゃんを身ごもってから6~7週間頃に赤ちゃんのお口の中で乳歯の歯胚が作られ始め、赤ちゃんを身ごもってから3~4ヶ月間頃に永久歯の歯胚が作られ始めます。


(※)永久歯の奥歯(小臼歯・大臼歯)の歯胚は

赤ちゃんが生まれた後に作られていきます。


お母さんのお腹の中にいるときに赤ちゃん(胎児)のお口の中で歯胚が作られ始め、乳歯は生後6~7ヶ月頃、永久歯は6~7歳頃から生えてきます。


◎先天性欠如が起きやすい部位

乳歯の場合は、上下の前歯(真ん中から2番目の乳側切歯)に先天性欠如が起きやすいです。特に、舌の乳側切歯が生えてこないケースが多く見られます。


先天性欠如で乳歯が生えてこないケースでは、同じ部位の永久歯も生えてこないことが多いです。


永久歯の場合は、上の前歯(真ん中から2番目の側切歯)、下の前歯(中切歯、側切歯)、上下の5番目の奥歯(第2小臼歯)が生えてこないケースが多く見られます。


◎親知らずが生えない方が増えています

先天性欠如歯の中には、親知らずが生えてこないケースもあります。


近年は、親知らずの歯胚が作られず、お口の中に親知らずそのものがない方が増えています。


■埋伏歯とは


◎歯ぐきやあごの骨の中に歯が埋まり、乳歯・永久歯が生えてこないことがあります

埋伏歯(まいふくし)とは、歯ぐきやあごの骨の中に歯が埋まり、乳歯・永久歯が生えてこないことを指します。


埋伏歯には、歯の一部が歯ぐきの外にでている半埋伏歯、歯ぐきやあごの骨の中に完全に歯が埋まっている完全埋伏歯の2種類があります。


先天性欠如歯と異なるのは、先天性欠如歯が歯そのもの(歯胚)が存在しないのに対し、埋伏歯は歯はあるものの、歯ぐきやあごの骨の中に歯が埋まって生えてこない、という点です。


◎さまざまな原因により、埋伏歯がひき起こされます

以下のような原因により、埋伏歯がひき起こされます。


・あごの骨格が小さく、歯が生えてくるスペースが足りない

・歯のサイズが大きく、歯が生えてくるスペースが足りない

・歯(歯胚)が作られた箇所が悪く、ほかの歯に邪魔されて歯が生えてこない

・歯が生える方向に腫瘍や嚢胞があり、邪魔されて歯が生えてこない

・歯根とあごの骨が癒着しており、歯が生えてこない(アンキローシス)


◎埋伏歯が起きやすい部位

乳歯の場合は、下の奥歯(第1・第2乳臼歯)に埋伏歯が多く見られます。


永久歯の場合は、上の犬歯(糸切り歯)、上下の親知らず(第3大臼歯)が埋伏しているケースが多いです。


なお、親知らずは、4本ともまっすぐ綺麗に生えてくることは少ないです。多くの方に、親知らずのいずれかが歯ぐきやあごの骨に埋まっている、「親知らずの埋伏歯」が見られます。


■先天性欠如歯、埋伏歯を放置することのリスク


◎歯並び・噛み合わせが乱れ、さまざまな悪影響をひき起こす可能性があります

先天性欠如歯、埋伏歯を治療せず放置した場合、歯が足りない・歯が生えてこない・変な生え方をしている(歯の一部のみが外に出ている)ことが原因で歯並び・噛み合わせが乱れるケースがあります。


歯並び・噛み合わせが乱れると、以下のようなさまざまな悪影響をひき起こす可能性も。


・発音に支障がでる(特に「サ・タ・ナ・ラ」行の発音に支障がでやすい)

・食べ物を噛みにくい

・肩こりや頭痛が起きやすくなる

・姿勢が悪くなる

・すみずみまで歯を磨きにくく、むし歯・歯周病にかかりやすくなる

・口元の見た目にコンプレックスを持ってしまう


◎先天性欠如歯は放置しても問題がないケースも

埋伏歯は埋まっている歯が隣の歯を押すなど、悪さをして、全体の歯並び・噛み合わせに悪影響を与えることが多いです。


悪影響を与えやすい埋伏歯に対し、歯そのものがない先天性欠如歯は、生えてこない箇所によっては放置しても大きな問題がないケースもあります。


■先天性欠如歯の治療方法


◎歯科矯正で歯並び・噛み合わせを整える、または、生えてこない歯を補う補綴を中心に治療を行います

先天性欠如歯は歯科矯正で歯並び・噛み合わせを整える、または、生えてこない歯を補う補綴(ほてつ)を中心に治療を行います。


・歯科矯正

・インプラント・ブリッジ・入れ歯で生えてこない部分の歯を補う(=補綴治療)


上記のほか、永久歯の先天性欠如の場合は、永久歯が生えてこず乳歯が抜けないため、そのまま乳歯を使い続ける、という対処方法もあります。ただし、乳歯を使い続けても40歳前後には歯根が吸収し、乳歯が抜け落ちてしまうケースが多いです。


■埋伏歯の治療方法


◎抜歯、または、埋まっている歯をひっぱり出す処置を中心に対処を行います

埋伏歯は抜歯、または、埋まっている歯をひっぱり出す処置(牽引)を行い、対処することが多いです。


・抜歯(歯ぐきの切開が必要な外科的抜歯を含む)

・両隣の歯にワイヤーを装着し、ワイヤーにつなげたフックを埋まっている歯にかけて歯をひっぱり出す(牽引処置)(歯の一部が生えている場合)


【お子さまの乳歯・永久歯が生えてこない場合はご相談ください】


乳歯が抜けた後は、通常、3ヶ月ほど経って永久歯が生えてきます。乳歯が抜けた後は、3ヶ月程度待ってみてください。


4ヶ月以上経っても永久歯が生えてこない・生える様子が見られない(永久歯の頭の部分も見えない)ときは、先天性欠如歯・埋伏歯の可能性があります。


お子さまに乳歯・永久歯が生えてこない場合は、当院までご相談ください。診察では歯科医師が歯・あごの骨の状態を確認し、適切な治療・処置方法をご提案させていただきます。

おしむら歯科こども矯正歯科クリニック
歯科医師
押村 侑希

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