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歯の本数が多い「過剰歯」 原因・割合は? 過剰歯の抜歯は全身麻酔での手術が必要?


「ウチの子、普通よりも歯が多い気がする…」


通常、乳歯は20本、永久歯は親知らずを含めて32本生えてきます。ところが、何らかの原因で通常より多く歯が生えてくることも。


通常より多く歯が生えてくることを、歯科医療では「過剰歯(かじょうし)」と呼びます。


今回は、お子さんをお持ちの親御さんが気になる方も多い、「過剰歯」のお話です。


■過剰歯になるのはナゼ?原因は?


◎過剰歯の原因ははっきりとはわかっていません

気になる方も多い過剰歯ですが、過剰歯になる原因ははっきりとはわかっていません。


原因ははっきりとはわかっていませんが、小さな子どもの時期(または、お母さんのお腹の中にいる胎児期)に何らかの原因によって歯の芽である歯胚(しはい)が余分に作られたり、歯胚が2つに分かれてしまい、過剰歯になるのでは、と推測されています。


過剰歯の原因については、原始人(原人)だった頃に存在した歯(現在の人類が失った歯)が何らかの原因でよみがえった、とする説も。「原人の歯のよみがえり」説はあくまでも推測ですが、興味深いところです。


■過剰歯はいつ頃気づくことが多い?割合は?


◎乳歯から永久歯へ生え変わる6~12歳頃に気づくケースが多いです

過剰歯は乳歯・永久歯、どちらにも現れる可能性があります。ただし、乳歯の過剰歯は稀です。


過剰歯は永久歯に現れることが多く、乳歯から永久歯へ生え変わる6~12歳頃に歯医者さんのレントゲンや小学校の歯科健診などで過剰歯に気づくケースが比較的多く見られます。


◎日本人全体の3~5%が過剰歯と見られています

過剰歯は意外と多く、日本人全体の3~5%(20~30人に1人程度)が過剰歯と見られています。学校で例えるなら、クラスの中に1~2人以上は過剰歯の子がいるようなイメージですね。


男女の割合では男性3:女性1で男性に過剰歯が多い、という調査結果があります(※)。


(※)日本歯科大学附属病院小児歯科 白瀬敏臣准教授
他「大学附属病院小児歯科における7年間におよぶ
過剰歯の実態調査
」(2018)より引用。


■過剰歯のタイプ(生え方の種類)


過剰歯は生え方により、以下のようなタイプに分けられます。


◎正中過剰歯(せいちゅうかじょうし)

上の真ん中の前歯(正中)のあいだや、正中の裏側から生えてくる過剰歯。もっとも多く見られます。


正中過剰歯は過剰歯が見える(過剰歯が生えており、外から見える)ケースのほか、存在はするものの歯茎の中に埋まって見えない過剰歯もあります。


◎順正過剰歯(じゅんせいかじょうし)

本来の歯が生える向きと同じく、舌側に向かって生えてくる過剰歯。本来の歯が生える向きと同様のため、順正過剰歯は生えてきた歯が見えることが多いです。


◎逆性過剰歯(ぎゃくせいせいかじょうし)

本来の歯が生える向きとは反対に、顎の骨に向かって生えてくる過剰歯。顎の骨に向かって生えてくるため、通常、逆性過剰歯は歯茎・顎の骨の中に歯が埋まったままになり、外からは見えないことが多いです。


なお、厳密には逆性ではないのですが、歯茎の中に水平に埋まったままの「水平埋伏歯」の過剰歯も存在します。


■過剰歯を抜かずに放置するデメリットは?子どもの頃に抜いておいた方がイイ?


◎過剰歯の生え方によっては、歯やお口への悪影響が生じることも

{歯やお口への悪影響が見られる過剰歯は、抜歯が基本的な対処方法になります}


お子さんをお持ちの親御さんは、「ウチの子の過剰歯、抜かなきゃダメなのかな…」とお悩みの方も多いかと思います。


以下のようなケースでは、過剰歯の放置によって歯やお口への悪影響が生じることも。


過剰歯による歯やお口への悪影響が見られる場合は、子ども・大人の時期を問わず、手術を含めた抜歯が基本的な対処方法になります。


[過剰歯による歯やお口への悪影響の例]


1.過剰歯の近くにある永久歯が生えてこない


本来歯が生えるべき位置に過剰歯があると、乳歯から永久歯へ生え変わるときに過剰歯が萌出(ほうしゅつ:歯が生えること)の邪魔をしてしまい、永久歯が生えてこない場合があります。


2.過剰歯の近くにある永久歯にダメージがおよぶ


過剰歯が育つ過程で近くにある永久歯の歯根を溶かしてしまい、永久歯にダメージがおよぶことがあります。過剰歯によって永久歯の歯根が溶かされると歯の根の神経がダメージを受け、過剰歯の近くにある永久歯の神経が死滅するケースも。


3.歯並び・噛み合わせの乱れ


過剰歯が前や隣の歯を押しているなど、他の歯への影響により、全体の歯並び・噛み合わせが乱れることがあります。


4.嚢胞ができる


逆性過剰歯や水平埋伏歯の過剰歯など、歯茎の中に過剰歯が埋まっている場合、過剰歯の周辺に嚢胞(のうほう:組織から浸み出た液体などで作られた袋状の物)ができるケースがあります。


過剰歯の周辺に嚢胞ができた場合は、嚢胞の近くにある永久歯の歯胚に悪影響がおよび、永久歯の歯根を溶かしてしまうことも。


■過剰歯を抜くときは全身麻酔(入院)が必要?


◎歯茎や顎の骨に埋まっている過剰歯は手術による抜歯が必要になる場合があります

順正過剰歯など、舌側に向かって過剰歯が生えている場合は手術をせずに過剰歯を抜けることもあります。


一方、逆性過剰歯や水平埋伏歯の過剰歯など、歯茎や顎の骨に埋まっている過剰歯は抜歯をするために手術が必要になる場合も。手術範囲によっては、患者さんへの精神的・肉体的負担を減らすために全身麻酔での抜歯が適しているケースもあります。


特に、お子様の場合、恐怖心でトラウマにならないよう、手術での過剰歯の抜歯においては全身麻酔をおすすめすることが多いです。


全身麻酔による手術で過剰歯を抜歯するときは、抜歯後に起こり得るトラブルに迅速に対処するために、入院での手術をおすすめする場合もあります。


なお、大人の方への全身麻酔による過剰歯の抜歯では、日帰りでの手術を行うケースも。


【過剰歯など、お子さんのお口に異常が見られる場合はお気軽にご相談ください】


おしむら歯科は口腔外科機能を有し、歯茎の切開が必要な難抜歯にも対応しております。


過剰歯はすべてのケースにおいて抜かなければならない、ということはありません。他の歯やお口への悪影響が見られなければ、過剰歯を抜かずに定期検診で様子を見ていく選択肢もあります。


過剰歯など、お子さんのお口に異常が見られる場合は、当院までお気軽にご相談ください。



おしむら歯科こども矯正歯科クリニック
歯科医師
押村 侑希

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