
こんにちは。おしむら歯科 院長の押村侑希です。
今回は、気をつけたい「乳歯のむし歯」について、お話しします。
お子さんをお持ちの親御さんの中には、お子さんの乳歯のむし歯を
「乳歯のむし歯は軽ければ放置してもいいよね? 永久歯に生え変わるんだから」
「乳歯だから、そのうち永久歯に生え変わるし、乳歯のむし歯は放っておいてもいいのでは?」
などの理由で、歯科医院で治療を受けさせずに放置しているケースが時折、見られます。
「乳歯はやがて抜け、永久歯に生え変わるから、乳歯のむし歯は治さなくてもいい」
上記の言葉は、本当なのでしょうか?
目次
■乳歯のむし歯を放置するリスク(起こり得る悪影響) 歯に黒い穴が開く だけではありません
◎乳歯のむし歯を放置し、歯に黒い穴が開いてるときは要注意
乳歯のむし歯を放置しており、歯に黒い穴が開いているときは要注意。穴の大きさにもよりますが、大きな黒い穴が開いている場合は、むし歯が歯の神経に達しているケースも。
◎乳歯のむし歯を放置すると、様々な悪影響が起きるおそれがあります
「乳歯はやがて抜け、永久歯に生え変わるから、乳歯のむし歯は治さなくてもいい」
上記のような考え方は、あまり適切ではありません。理由は、乳歯のむし歯を放置すると、以下のような様々な悪影響が起きるおそれがあるためです。
1.歯並び・噛み合わせの乱れによる、顎の発育への悪影響
乳歯は歯質が未成熟でやわらかい歯です。やわらかい歯のため、永久歯と比べて、乳歯はむし歯にかかりやすく、むし歯が速く進む傾向があります。
乳歯のむし歯を放置すると、いつの間にか歯の神経にむし歯が達してしまうことも。歯の神経に達した乳歯のむし歯は、抜歯が必要になるケースも少なくありません。
小さな子どもの時期に重度のむし歯などで乳歯を失うと、乳歯を失った部分に隣の歯が倒れ込み、全体の歯並び・噛み合わせが乱れることがあります。
歯並び・噛み合わせが乱れると、偏った力(アンバランスな力)が歯や顎の骨にかかり、顎の発育に悪影響が生じるおそれがあるのです(顎が前に突き出す、下顎が十分に育たない、顎がゆがみ左右で顎の形が異なるお顔立ちになる、など)。
{むし歯の痛みが原因で偏った噛み方をしていると、顎の発育に悪影響が生じることも}
歯を失ったケースのほか、乳歯のむし歯の痛みが原因で、痛くない側の歯ばかりで噛む、など、子どもの噛み方が偏ってしまう場合があります。
偏った噛み方をしていると、顎の発育に悪影響が生じ、顎の骨格異常が起きることも(顎がゆがみ左右で顎の形が異なるお顔立ちになる、など)。
顎の骨格異常のほか、偏った噛み方が原因で子どもの顎の筋肉・顎の骨格が十分に育たず、“噛む力が弱く”なることもあります。
{顎が健全に成長しない場合、歯の生え変わりの時期に歯並びが乱れやすくなります}
上記のような理由により、小さな子どもの時期(8歳頃まで)に顎が健全に成長しない場合、歯の生え変わりの時期に歯並びが乱れやすくなります。
顎が健全に成長しない場合、歯の生え変わりの時期に歯並びが乱れやすくなるメカニズム
顎が健全に成長せず、顎の骨格が小さすぎると、口腔内に歯がきれいに生えるスペースが不足。6~12歳頃の歯の生え変わりの時期に、永久歯がまっすぐ生えにくくなります。
口腔内のスペース不足により、永久歯がねじれて生えてきたり、歯と歯が重なって生えてくるなど、顎の小ささが原因で歯並びが乱れやすくなるのです。
2.乳歯の下にある永久歯への悪影響(まだらに変色した永久歯が生えてくる、デコボコした永久歯が生えてくる、など)
人は、歯が生え変わる生き物です(ワンちゃん(犬)やお猿さん(サル)も歯が生え変わりますね)。
乳歯の下(乳歯の歯根の下)には、やがて生えてくる永久歯の歯胚(歯の素になるタネのような物)があり、6~12歳頃になると乳歯が抜けて永久歯に生え変わります。
乳歯のむし歯を放置し、むし歯が重症化すると、むし歯菌を含む細菌や膿が乳歯の下にある永久歯に以下のような悪影響をおよぼすことも。
[乳歯のむし歯が重症化した場合に起こり得る、永久歯への悪影響の例]
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白色や茶色など、まだらに変色した永久歯が生えてくる
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表面がデコボコした(歯の一部が欠けるなど)永久歯が生えてくる
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もろく、弱い永久歯になる
3.むし歯菌が多い状態の継続により、乳歯から永久歯に生え変わった後に、永久歯がむし歯にかかりやすくなることがある
乳歯のむし歯を放置していると、むし歯菌が増え、増殖したむし歯菌が常にお口の中に棲みつく状態になります(むし歯菌が棲みつきやすい口腔内環境になってしまう)。
むし歯菌が多い状態が続くと、乳歯から永久歯に生え変わった後に、お口の中のむし歯菌が原因で永久歯がむし歯にかかりやすくなることがあるのです。
4.重度のむし歯で乳歯を失った場合、発音に影響が出ることがあり、言語の発達に関わる場合も
乳歯・永久歯など、歯の種類に関わらず、歯は発音を助ける重要な役割を担っています。
重度のむし歯で乳歯を失った場合(特に前歯の乳歯)、失った歯のすき間から空気が漏れるなどが原因で、発音に支障をきたすことも(サ・タ・ナ・ラ行の発音など)。
乳歯の時期=1~6歳頃は、発音・言語が発達する大切な時期です。
子どもの発音・言語が発達する大切な時期に乳歯を失い、発音に支障をきたす→発音に支障をきたしたことが原因で、人との会話によるコミュニケーションに悪影響をおよぼし、発音・言語の発達が遅れるおそれがあります。
5.乳歯のむし歯で噛み方が偏り、食事がうまくできなくなることがある
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乳歯のむし歯が痛み、痛くない側の片方の歯ばかりで食べ物を噛む
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重度のむし歯で乳歯を失い、残っている側の歯ばかりで食べ物を噛む
乳歯のむし歯が原因で上記のような偏った噛み方をしていると、
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弾力のあるお肉
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繊維質のお野菜・お魚
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歯ごたえがあるナッツ類
などを、まともに噛めなくなる場合があります。
乳歯の時期=1~6歳頃の小さな子どもの時期は、脳や身体が成長していく大切な時期です。
乳歯のむし歯が原因で、乳歯の時期に食べ物をまともに噛めない場合、栄養が不足して脳の発達・身体の発育に悪影響をおよぼすおそれがあります。
6.乳歯のむし歯の痛みで夜眠れない、情緒が不安定になるなどが原因で、生活全般や子どもの身体の成長に悪影響をおよぼすおそれがある
乳歯は歯質が未成熟でやわらかく、むし歯が進行しやすいです。乳歯のむし歯を放置した結果、むし歯が歯の神経に達してむし歯が重症化すると、
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乳歯のむし歯が痛く、夜眠れない
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乳歯のむし歯が痛く、夜眠れず、情緒が不安定になる(常に子どもがイライラしていたり、ささいなことで怒る、など)
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乳歯のむし歯が痛く、夜眠れず、睡眠による脳の発達・身体の成長に悪影響をおよぼす
上記のように、生活全般や子どもの脳の発達・身体の成長に悪影響をおよぼすおそれがあります。
【お子さんが「歯が変」「歯が痛い」と言っているときや、変な噛み方をしている場合は、早めに歯科医院で受診を】
上記でご説明したとおり、乳歯のむし歯を放置すると、様々な悪影響が生じるおそれがあります。
気をつけたいのは、「乳歯のむし歯は、小さな子どもの時期のみの悪影響に留まらない」点です。
乳歯のむし歯が原因で顎の健全な成長がさまたげられたり、永久歯の形成に悪影響がおよぶと、一生を通じて、歯・顎の機能に支障をきたすケースも。
顎を健全に成長させ、しっかりと食べ物を噛める「綺麗な歯並び」を得るためにも、乳歯のむし歯は早期発見・早期治療が大切です。
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子どもが「歯が変」「歯が痛い」と言っている
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片方の歯ばかりで噛むなど、子どもが変な噛み方をしている
など、お子さんの歯・噛み方に異常が見られるときは、早めに歯科医院を受診しましょう。
{小さな子どもの頃から、歯科医院で定期検診を受けましょう}
むし歯など、歯の病気や異常がなくても、日頃から歯科医院で定期検診を受けるようにすることが大切です。
歯科医師が定期的にお子さんのお口周りの状態を確認することで、むし歯などの歯の病気や、歯並びの乱れ・顎の骨格異常などの歯・顎の異常を早期に発見しやすくなります。