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【エナメル質形成不全】5~10人に1人の子どもが発症?歯の変色・欠けに注意を



こんにちは。おしむら歯科 院長の押村侑希です。


今回は、子どもに見られることがある歯の病気「エナメル質形成不全」について、お話しします。


乳歯・永久歯など、お子さまの歯の色が茶色くなっている、または、歯が欠けている、そんな症状は見られませんでしょうか?


もし、歯の色が茶色っぽく見えたり、むし歯でもないのに歯が欠けている場合は、エナメル質形成不全の可能性があります。


■エナメル質形成不全とは?


◎妊娠中のお母さんからの影響や遺伝などの原因により、歯のエナメル質がしっかり作られない病気です

エナメル質形成不全とは、妊娠中のお母さんからの影響や遺伝などの原因により、歯のエナメル質がしっかり作られない病気です。


エナメル質形成不全になると、生えたばかりなのに、歯の色が茶色い・黄色い、または、歯がまだらに白くなったり、歯の表面が欠けていることがあります。


{原因による、エナメル質形成不全の症状の現れ方の違い}


遺伝や全身的要因によって生じたエナメル質形成不全(次の項の①②③)は、必ずと言って良いほど、左右対称に歯のエナメル質の変色・欠けが現れます(遺伝の場合は、すべての歯のエナメル質に形成不全の症状が現れます)。


一方、乳歯の怪我や乳歯の時期の高熱、乳歯の重度のむし歯など、お子さまが生まれた後の局所的要因によって生じた永久歯のエナメル質形成不全(次の項の④)は、左右対称ではなく、ランダムな位置に歯のエナメル質の変色・欠けが現れることが多いです。


◎7~9歳の子どもの5~10人に1人がエナメル質形成不全という調査結果も

2015・2016年に日本小児歯科学会と富山大学が行った共同研究では、日本の7~9歳の子どもの5~10人に1人がエナメル質形成不全だった、と報告されています(※)。


上記の調査結果からもわかるように、エナメル質形成不全の割合は約11~20%。エナメル質形成不全はけっして珍しいものではなく、子どもによく見られる歯の病気の一つです。


(※)日本小児歯科学会 富山大学 共同研究「エナ

メル質形成不全の有病率」(2017)より引用。


■エナメル質形成不全の原因


①妊娠中のお母さんからの影響(全身的要因)


エナメル質形成不全の原因の一つと考えられるものに、妊娠中のお母さんからの影響があります。


妊娠中、つわりで十分に食べられないなど、お腹の中にいる赤ちゃんへの栄養が不足し、胎児の時期に歯がしっかり形成されないと、エナメル質形成不全になる可能性があります。


妊娠中に飲んだお薬が、エナメル質の形成に悪影響を与えるケースも。


早産で、しっかりエナメル質が形成される前に赤ちゃんが生まれた場合も、エナメル質形成不全になることがあります。


{エナメル質形成不全になったのは、お母さんのせい?}


お子さまの歯がエナメル質形成不全だからと言って、必ずしも、妊娠中のお母さんからの影響とは限りません。後述する、赤ちゃん側の要素もエナメル質形成不全の原因になり得ます。どうか、「自分のせいで、子どもがエナメル質形成不全になってしまった」と気になさらないでください。


②胎内の赤ちゃんの代謝異常(全身的要因)


お母さんのお腹の中にいる赤ちゃんの身体に代謝異常(身体の組織を作ったり壊したりする機能の異常)があると、エナメル質形成不全になることがあります。


③遺伝によるもの(全身的要因)

 

遺伝により、生まれつき、エナメル質形成不全になることがあります。遺伝でエナメル質形成不全になるメカニズムは、はっきりとはわかっていません。


遺伝によるエナメル質形成不全は、すべての乳歯、または、すべての永久歯に歯の変色・歯の欠けなどの形成不全が見られます。何本かなど限定的ではなく、すべての歯に変色・歯の欠けが見られる場合は、遺伝が原因の可能性が高いです。


④乳歯の怪我・高熱・重度のむし歯など(局所的要因)(永久歯のエナメル質形成不全)


乳歯の時期に歯をぶつけて歯を怪我したり、高熱、乳歯の重度のむし歯が原因で、永久歯のエナメル質形成不全になることがあります。


■エナメル質形成不全になると、何が良くないの?


◎エナメル質がきちんと作られないと、むし歯が進みやすくなります

エナメル質形成不全になると良くないのは、むし歯が進みやすくなってしまう点です。


エナメル質は歯のいちばん外側にあり、飲食物の熱、および、むし歯菌がだす酸や飲食物に含まれる酸から歯を守る役割があります。しかし、エナメル質形成不全になり、エナメル質がきちんと作られないと酸から歯を守る機能が足りず、むし歯が進行しやすくなってしまうのです。


エナメル質形成不全の方がむし歯になると、ごく短い期間で、歯の神経までむし歯が進んでしまうことも。特に、お子さまはただでさえ歯質が未成熟でやわらかく、むし歯が進行しやすいです。お子さまの歯にエナメル質形成不全があると、あっという間に歯の神経までむし歯が進んでしまうケースもあります。お子さまの歯にエナメル質形成不全が見られる場合は、むし歯の進行に注意が必要です。


■エナメル質形成不全にならないためには?


◎乳歯の場合は確実な予防方法はありませんが、いくつかのポイントに気をつけることで、永久歯のエナメル質形成不全を防ぐのに役立ちます

遺伝などの要因も関係するため、「これさえしておけば大丈夫」という、乳歯のエナメル質形成不全の確実な予防方法はありません。また、一般の方が、歯の変色がエナメル質形成不全なのかむし歯なのかを見極めるのは難しいです。


予防(乳歯の場合)・見極めが難しいエナメル質形成不全ですが、以下のようなポイントに気をつけることで、早期発見・早期治療につながると共に、永久歯のエナメル質形成不全を防ぐのに役立ちます。


ポイント①お子さまの歯にむし歯がなくても、ふだんから歯科医院で定期検診を受ける

ポイント②乳歯のむし歯を放置しない(ふだんから保護者様がお子さまの歯の状態をチェックし、歯に異常が見られる場合やお子さまが歯の異常をうったえているときは歯科医院で早めに診察を受ける)

ポイント③乳歯をぶつけないよう、注意する


■エナメル質形成不全の治療・ケアについて


◎エナメル質形成不全を根本的に改善するのは不可能ですが、定期検診、および、適切な対処により、歯への悪影響を軽減できます

歯のエナメル質は一度形成されてしまうと、生まれ変わらせるのは不可能です。このため、エナメル質形成不全を根本的に改善することはできません。


根本的な改善は不可能ですが、基本となる定期検診に加え、以下のような適切な対処により、歯への悪影響を軽減できます。


基本の対処方法


むし歯などのお口の病気・異常がなくても、ふだんから歯科医院で定期検診を受ける(むし歯をはじめとするお口の病気・異常の早期発見・早期治療につなげやすくなります)。


対処方法①軽度の場合(歯の変色のみの場合)


歯科医院でフッ素塗布をする、または、フッ素が含まれた歯磨き粉・マウスウォッシュを用い、歯のエナメル質を強化する。


対処方法②歯に小さな穴が開いている、歯に小さな欠けがある場合

 

レジン充填で歯の穴や欠けをふさぐ。


対処方法③歯に大きな穴が開いている、歯に大きな欠けがある場合


詰め物・被せ物(レジン、銀歯、セラミックなど)で歯の穴や欠けをふさぎ、歯を保護する。


【お子さまの歯に異常が見られる場合はご相談ください】


エナメル質形成不全になるとむし歯が進行しやすく、進行のスピードも速いです。「むし歯かな」と思っていたら、あっという間に歯の神経にむし歯が達してしまい、神経の治療が必要になったり、重度のむし歯のケースでは抜歯になる場合も。


歯が茶色い・黄色い、または、歯がまだらに白く変色していたり、歯が欠けているなど、お子さまの歯に異常が見られる場合は当院までご相談ください。


診察では歯科医師がお子さまの歯の状態を確認・検査し、適切な対処方法をご提案させていただきます。

おしむら歯科こども矯正歯科クリニック
歯科医師
押村 侑希

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