こんにちは。おしむら歯科 院長の押村侑希です。
お子さまをお持ちの保護者様は、子どものむし歯に気をつけている方が多いかと思います。
歯を守るためには、むし歯予防が欠かせません。
むし歯予防と共に、気をつけていただきたいのが、「子どもの歯周病」です。
「子どもの歯周病」と聞いて、保護者様によっては「えっ!?子どもも歯周病になるの?」と驚かれるかもしれません。
たしかに、40歳以上の中高年の方には、進行した歯周病が多く見られます。
40歳以上で多く見られる歯周病ですが、歯周病は中高年の方のみの病気ではありません。
近年は、さまざまな原因から子どもが歯周病にかかり、歯ぐきが腫れたり出血するケースが増えています。子ども・未成年の方の歯周病は急激に症状が進むものもあるため、注意が必要です。
今回は、「子どもの歯周病 種類と予防方法」についてご説明します。
目次
■歯周病とは
◎歯ぐきやあごの骨などの歯周組織がダメージを受けるお口の病気です
歯周病とは、歯を取り囲む歯ぐきやあごの骨などの歯周組織がダメージを受けるお口の病気です。
主に以下の2つの原因により、歯周病の症状が進行します。
・歯垢(プラーク)の中にひそむカビ菌などの歯周病菌が出す毒素(プラーク性歯周疾患)
・噛み合わせの乱れが原因で歯やあごの骨に負荷がかかることによる歯周組織へのダメージ(外傷性咬合による非プラーク性歯周疾患)
■歯周病の症状(歯周病の進行の仕方)
◎子どもの歯周病は「歯肉炎」(初期の歯周病)が多いです
歯周病は進行度によって以下の3つの段階に分けられます。
・初期:歯肉炎
・中期:歯周炎
・重度:重度歯周炎(歯槽膿漏)
子どもの歯周病は初期段階である「歯肉炎(しにくえん)」が多いです。歯肉炎になると歯ぐきが赤く腫れたり、歯みがきのときに歯ぐきから血が出ることがあります。
中期以上の歯周病である歯周炎(ししゅうえん)では歯ぐきが下がったり(歯ぐきの退縮)、あごの骨が溶けるなど、症状が重くなります。
中期以上の歯周炎では、外科的な手術による歯周外科治療が必要になることも。
外科手術が必要になることもある歯周病ですが、適切な歯みがき・歯間清掃を行い、歯科医院でケアを受けていれば、子どもの歯周病が中期以上の歯周炎に進行する確率はそれほど高くありません(※)。
(※)若年性歯周炎は急激に症状が進行することがあります。
■子どもの歯周病の種類
①不潔性歯肉炎
不潔性歯肉炎とは、主に歯みがき・歯間清掃不足で発症する初期の歯周病です。
お子さまご自身による自分磨きや保護者様による仕上げ磨き、および、歯間清掃(フロスや歯間ブラシを使用)がしっかりできていないと、磨き残した歯垢によって不潔性歯肉炎を発症することがあります。
②萌出性歯肉炎
萌出(ほうしゅつ)性歯肉炎とは、永久歯の奥歯が生えてくるときに発症する初期の歯周病です。
6~12歳ごろの乳歯から永久歯への生え変わりの時期に、萌出性歯肉炎が見られることがあります。
永久歯は時間をかけてゆっくり生えてきます。永久歯の中でも特に大きな歯である6歳臼歯(第1大臼歯)や12歳臼歯(第2大臼歯)などの奥歯は完全に生えるまで1年程度かかることもあり、その箇所が萌出性歯肉炎になりやすいです。
乳歯から永久歯への生え変わりのとき、大きな歯である6歳臼歯や12歳臼歯は数ヶ月間~1年程度かけて歯が生えてくるため、奥歯が歯ぐきに埋もれている状態が長く続きます(※)。
(※)完全に永久歯が生えてくるまでの期間は個人差があります。
歯ぐきに埋もれている期間が長いため歯ブラシが届かず、奥歯の噛み合わせ面の溝を中心に磨き残しが増えて歯垢が溜まりやすくなってしまうのです。
上記の理由から磨き残しが増え、歯垢が付着した状態が続くことで、歯垢の中にひそむ歯周病菌が増殖。増殖した歯周病菌が出す毒素によって、萌出性歯肉炎を発症することがあります。
③思春期性歯肉炎
思春期性歯肉炎とは、10~15歳ごろの思春期に発症する初期の歯周病です。
ホルモンバランスの乱れや生活の変化により、歯周病菌が出す毒素に対する抵抗力が低下することで思春期性歯肉炎を発症します。
通常、歯周病は歯垢にひそむプラーク、および、歯やあごの骨にかかるダメージによって発症します。しかし、思春期性歯肉炎はプラークの磨き残しがそれほど多くなく、歯やあごの骨にダメージを受けていなくても発症する点が特徴です。
10~15歳ごろになると子どもの体内ではホルモンの生成が活発化します。特に、思春期である小学校高学年~中学生の女の子はプロゲステロンなどの女性ホルモンが活発化し、思春期性歯肉炎になりやすいです。
お子さまをお持ちのお母様も、中学生ごろの時期に歯ぐきの腫れ・出血が起き、「そう言えば、あのとき歯ぐきの調子が悪かったかも…」というご経験がある方も多いのではないでしょうか?
④若年性歯周炎(侵襲性歯周炎)
若年性歯周炎(侵襲性歯周炎)とは、10代・20代の時期に発症する侵襲性(※)が高い歯周病です。
(※)侵襲性(しんしゅうせい)・・・身体の組織を傷つけ、侵す性質。
初期段階である歯肉炎が多いの子どもの歯周病(①~③)と異なり、若年性歯周炎は中期以上の歯周病に分類されます(歯周炎は歯肉炎よりも症状が重い)。
若年性歯周炎の発症原因ははっきりとはわかっていません。現段階の研究では、歯ぐきやあごの骨にダメージを与える歯周病菌の中で、特に強い毒素を出すAaやPgなどの細菌が若年性歯周炎をひき起こしていると考えられています。
通常、歯周病は初期の歯肉炎から長い年月をかけて中期、重度へと病気が進行していきます。10代・20代の頃に歯肉炎にかかり、20~30年かけて歯ぐきやあごの骨の状態が少しずつ悪化、中期以上の歯周炎に進行し、中高年になって初めて歯周病の存在に気づくケースが多いです。
ゆっくりと進行することが多い通常の歯周病に対し、若年性歯周炎は急激に症状が進みやすい点が特徴です。若年性歯周炎になると初期段階の歯肉炎から中期~重度の歯周炎へ一気に症状が進みやすく、速いスピードで歯ぐきが大きく下がり、あごの骨が溶けていくケースが珍しくありません。
■子どもの歯周病の予防方法
◎毎日の歯みがき・歯間清掃&歯科医院で受ける定期検診が大切
子どもに限らず、歯周病の予防の基本は毎日行う歯みがきと歯間清掃です。ただし、お子さまご自身や保護者様が行う歯みがきと歯間清掃だけでは、歯についた歯垢・歯石は落とし切れません。
歯周病をより効率的・効果的に予防するためには、毎日のケアに加え、歯科医院で定期的に検診を受けることが大切です。
歯科医師が行う定期検診により、歯周病・むし歯やお口の異常の早期発見・早期治療につながります。定期検診では、歯科医師による検診のほか、歯科衛生士が歯のクリーニングを行います。歯科衛生士が行うプロのクリーニングを受けることで、お子さまご自身や保護者様では落とし切れない歯垢・歯石を除去でき、歯周病の発症・進行を抑えやすくなります。
{歯みがき指導を行っています}
おしむら歯科では、お子さまや保護者様への歯みがき指導を行っています。
歯科衛生士のアドバイスにより、正しいブラッシング方法を身につけることでより効率的に歯垢を落としやすくなり、歯周病・むし歯予防の効果を高められます。
お子さまの自分磨き、および、保護者様の仕上げ磨きの仕方についてはブログでご紹介しています。併せてご参照ください。
【お子さまのお口のことでお困りの方はお気軽にご相談ください】
「子どもの歯周病 種類と予防方法」について、お話をさせていただきました。
40代以上の中高年の方の病気と思われがちな歯周病ですが、子どもも歯周病になる可能性があります。
当院では、歯周病・むし歯などのお口の病気をはじめとして、歯並びの乱れやあごの成長異常をいち早く見つけるために、お子さまを対象にした定期検診を行っています。
「子どもの歯を磨いているときに歯ぐきから血が出ることがある」
「子どもが「歯がヘン」と言っている」
「子どもの歯並びの乱れが心配」
など、お子さまのお口のことでお困りの方はお気軽にご相談ください。
初診では歯科医師がお子さまのお口・あごの状態を確認し、お1人お1人に合った治療・ケア方法をご提案させていただきます。