おしむら歯科ブログ BLOG OSHIMURA

歯周病は「サイレントキラー」 歯周病によって起こり得る全身の病気とは



「サイレントキラー(静かな殺し屋)」


何だか、おっかない言葉から始まった今月のブログですが、皆様は上記の言葉をご存知でしょうか?


サイレントキラーとは、歯周病の怖さを表した言葉です。


歯周病は自覚症状に乏しく、ご自身では病気の存在に気づきにくい点が特徴です。自覚症状の乏しさから、海外では、歯周病は「サイレントキラー(静かな殺し屋)」と呼ばれることもあります。


■歯周病の特徴


①自覚症状に乏しく、ご自身では歯周病にかかっていることに気づきにくい

歯周病の特徴は、自覚症状に乏しく、ご自身では歯周病にかかっていることに気づきにくいことが挙げられます。


特に、初期段階の歯周病である歯肉炎は、ほとんどの方が自覚できず、歯周病を放置しているケースが少なくありません。


歯周病に気づかず、歯科医院で治療を受けずに放置すると、歯周病が中程度~重度に進行することも。


中程度~重度の歯周病(歯周炎、歯槽膿漏)になると、歯ぐきが大きく下がったり、顎の骨が溶けて歯がグラグラし始めます。重度の歯周病では歯を支えている顎の骨の大部分が溶けてしまい、ポロリと歯が抜け落ちるケースも珍しくありません。


②お口周りだけではなく、心筋梗塞や誤嚥性肺炎など、全身性の病気をひき起こすことがある

歯周病のもう一つの特徴は、お口周りだけではなく、歯周病が原因で全身性(=身体全体)の病気をひき起こすことがある点です。


重度の歯周病を放置すると、顎の骨の内側にある血管の中に、歯周病菌をはじめとする細菌が入り込むケースがあります。血管の中に侵入し、血液に乗った歯周病菌は全身をかけめぐり、以下のような病気・異常がひき起こされる場合も。


[歯周病がひき起こす可能性がある全身性の病気・異常]


  • 心筋梗塞・脳梗塞
  • 誤嚥性肺炎
  • 糖尿病
  • 早産・低体重児出産

次の項では、なぜ、歯周病が進行すると上記のような全身性の病気・異常をひき起こすことがあるのかついて、ご説明します。


■歯周病がひき起こす可能性がある全身性の病気・異常


研究段階ではありますが、歯周病は、以下のような全身性の病気・異常との関連性が指摘されています。


1.心筋梗塞・脳梗塞

歯周病菌がひき起こす可能性がある全身性の病気の一つが、心筋梗塞・脳梗塞です。


血液に入った歯周病菌が出す内毒素や炎症性物質(サイトカイン)が血管の内壁を傷つけ、血栓ができることで、心筋梗塞・脳梗塞を発症する可能性があると考えられています(※1)(※2)。


(※1)東京大学大学院医学系研究科「日本人男性
労働者における歯周病と心筋梗塞の関連性に関
する5年間の追跡調査
」(2014)より引用。


(※2)A Lafon,B Pereira,T Dufour,V Rigouby,M Giroud,Y
Béjot,S Tubert-Jeannin「Periodontal disease and stroke:
a meta-analysis of cohort studies
」(2014)より引用。


2.誤嚥性肺炎

誤嚥性(ごえんせい)肺炎とは、食べ物や唾液が誤って肺の中に入ることでひき起こされる肺炎です。


加齢による飲み込む力の低下・のどの筋反射の低下(肺の中に異物が入らないように咳き込む機能の低下)などが、誤嚥性肺炎の主な発症理由とされています。


加齢に加え、唾液に含まれる歯周病菌が出す炎症性物質がのどの筋肉の反射機能を低下させ、誤嚥性肺炎をひき起こす可能性があることが研究によって指摘されています(※)。


(※)岡山大学大学院医歯学総合研究科「歯周病
原性細菌によって起こる誤嚥性肺炎の分子免疫
学的病態の研究
」(2002-2003)より引用。


3.糖尿病

歯周病と糖尿病は、お互いに深く関係しています。


糖尿病が進行すると、血糖コントロールの異常により、歯周病が進行しやすいです。反対に、歯周病が進行すると、歯周病菌が出す炎症性物質によってインスリンの働きが低下し、糖尿病が進行しやすくなることが研究によって指摘されています(※)。


(※)Stöhr, J.et al.「Bidirectional association between pe
riodontal disease and diabetes mellitus: a systematic review
and meta-analysis of cohort studies
」(2021)より引用。


4.早産・低体重児出産

歯周病にかかっている妊婦さんは、早産・低体重児出産の割合が多いことが研究によって報告されています(※)。


(※)鹿児島大学大学院医歯学総合研究科「歯周病と産婦
人科疾患の関連性
」(2012)より引用。


研究では、歯周病菌が出す炎症性物質が子宮の収縮を促進させてしまい、早産・低体重児出産がひき起こされるのでは、と考えられています。


【毎日のセルフケア&定期検診で歯周病の進行を抑えましょう】


自覚症状に乏しく、全身性の病気・トラブルをひき起こす可能性もある、歯周病。


歯周病の進行を抑えるには、以下の2点が欠かせません。


[歯周病の進行を抑えるために欠かせないセルフケア&プロケア]


  1. ご自身で行う、毎日の歯磨き+歯間清掃(セルフケア)
  2. 歯科医院で受ける定期検診(プロケア)

歯周病の進行を抑え、大切な歯を守るために、まずは、毎日の歯磨き+歯間清掃をきちんと行いましょう。


セルフケアに加え、歯科医院で定期検診を受けることで、お口の健康を保ちやすくなります。

おしむら歯科こども矯正歯科クリニック
歯科医師
押村 侑希

⇒院長の経歴はこちら