こんにちは。おしむら歯科 院長の押村侑希です。
今回は「歯周病」についてお話をさせていただきます。
目次
■歯周病とは
◎歯ぐきや歯槽骨に炎症が起きる病気です
歯周病とは、歯の周辺組織の歯ぐきやあごの骨(歯槽骨)に炎症が起きる病気です。
歯周病になると歯ぐきが腫れて出血したり、歯を支えている歯槽骨が溶けて歯がグラグラになることがあります。重度の歯周病では自然に歯が抜け落ちることも珍しくありません。
◎歯周病は誰もがなる可能性があります
歯周病は40代以上の日本人の約8割がかかるとされる「国民病」です(※)。誰もが歯周病になる可能性があります。
歯周病は40代・50代以上の中年世代の方や60代以上の高齢世代の方に起こりやすい病気ですが、20代・30代の若い方にも歯周病は少なくありません。
20代でも約6~7割、30代では約8割の方が軽度の歯肉炎を含めた歯周病にかかっているとされています。現在は未成年の方にも歯周病が増えており、10代の方の歯周病の割合は約5割となっています(※)。
(※)厚生労働省「平成28年歯科疾患実態調査」(2016)より引用。
◎歯を失う原因の第1位は歯周病
歯を失う原因の第1位は何だと思いますか。むし歯?事故?いいえ、実は歯を失う原因の第1位は「歯周病」です。約4割の方が歯周病が原因で歯を失っています。ちなみに、歯を失う原因の第2位はむし歯、第3位は歯根が折れたり割れる歯根破折です。
■歯周病のメカニズム
◎お口の中にひそむ歯周病菌によってひきおこされます
むし歯と同様に、歯周病は感染症の一種です。ほかの人からの唾液感染が原因で歯周病菌に感染します。
歯周病は、歯と歯ぐきの境目にある歯周ポケットの中にひそむ歯周病菌によってひきおこされます。歯磨き不足やメンテナンス不足が原因で歯周ポケットの中に歯垢や歯石が溜まると、歯周ポケットにひそむ歯周病菌が毒素を出し、歯ぐきや歯槽骨に炎症を起こします。これが、歯周病を発症するメカニズムです。
■歯周病の症状
◎歯周病は「サイレントキラー」
歯周病はむし歯と異なり、痛みなどの自覚症状がほとんどありません。病気が進行しても痛みを感じにくいため、海外では歯周病を「サイレントキラー(静かな殺し屋)」と呼んでいます。
歯周病を自覚できずに病気を放置し続け、重度になってはじめて気がついたときには歯ぐきが大きく下がって歯がグラグラ、歯が抜け落ちる寸前の状態になっていた…というケースも珍しくありません。
◎進行段階別 歯周病の症状
歯周病は初期段階の歯肉炎から始まり、中程度の歯周炎、重度の重度歯周炎(歯槽膿漏)へと症状が進行します。
<初期の歯周病「歯肉炎」の症状>
・歯ぐきが赤く腫れる
・歯ぐきから血が出る(歯磨きをしたときや硬い物を噛んだときに歯ぐきから血が出る)
<中程度の歯周病「歯周炎」の症状>
・歯ぐきが赤黒く腫れる
・歯ぐきから血が出る(歯磨きをしたときや硬い物を噛んだときに歯ぐきから血が出る)
・歯ぐきから膿が出る(食べ物を噛んだときや歯を噛み締めたときに歯ぐきから膿が出る)
・歯ぐきがブヨブヨしてくる
・歯ぐきが下がり歯が長く見える
・歯がグラつき始める
・口臭がする(腐った卵や腐った玉ねぎのような臭いがする)
・硬い物を噛んだときに歯に違和感を感じる
<重度の歯周病「重度歯周炎(歯槽膿漏)」の症状>
・歯ぐきが赤黒く腫れる
・歯ぐきから血が出る(歯磨きをしたときや硬い物を噛んだときに歯ぐきから血が出る)
・歯ぐきから常に膿が出る
・歯ぐきがブヨブヨしてくる
・歯ぐきが大きく下がり歯の根元にある歯根がむき出しになる
・非常に強い口臭がする(腐った卵や腐った玉ねぎのような臭いがする)
・歯がグラグラして食べ物をまともに噛めなくなる
・力を加えなくても自然に歯が抜け落ちる
〔歯周病は全身の健康に悪影響をおよぼします〕
重度の歯周病を放置すると歯周病菌があごの中の血管に入り込み、細菌が全身をかけめぐります。全身にばらまかれた細菌により、歯周病が原因で以下の病気や症状をひきおこす可能性があることが研究結果により報告されています。
・心筋梗塞や脳梗塞
・肺炎(誤嚥性肺炎)
・糖尿病の症状悪化
・不妊症
・早産
・低体重児出産
・流産
【毎日のセルフケアと定期メンテナンスで歯周病を予防しましょう】
歯周病は初期段階の歯肉炎であれば、ご自身で行う毎日の歯磨きで症状を改善できます。
歯周病をはじめ、むし歯などのお口の病気を予防するには毎日の歯磨きをしっかり行うことが大切です。毎日の歯磨きと合わせ、歯科医院で定期的にメンテナンスを受けることでご自身では落とし切れない箇所や歯周ポケット内部の汚れを除去でき、歯周病・むし歯予防の効果を高められます。
毎日の歯磨き+歯科医院で受ける定期メンテナンスで歯周病・むし歯を予防し、お口の健康を守りましょう。