「保険の歯のクリーニングはなんで2回に分けるの？」

「保険と自費の歯のクリーニングの違いは何？」

こんにちは。おしむら歯科　院長の押村侑希です。

当院では保険・自費による歯のクリーニングを行っています。

両者はどちらも歯を清掃する、という点では同じです。ただし、保険と自費のクリーニングには目的に違いがあるほか、清掃に使う器具や清掃範囲、清掃にかける時間が異なります。

今回は「歯科医院で行う歯のクリーニング」についてご紹介します。

■保険の歯のクリーニング

◎「歯周病治療」を目的に歯のクリーニングをします

保険の歯のクリーニングは歯周病治療を目的として行われます。

「え？別に歯周病じゃないけど、何で歯周病治療を目的にするの？」

と不思議に思われる方もいらっしゃるかもしれません。

これは、国の制度が関係しています。

◎治療以外の目的では保険を適用できません

国の制度では、

「保険診療は「治療を目的」とするものに限る」

というルールがあります。むし歯予防や歯周病予防などの予防目的、または、お口の見た目を綺麗にする審美目的では保険診療を行えないのです。このため、保険の歯のクリーニングは「歯周病治療」を目的（名目上の目的）として行われます。

◎保険の歯のクリーニングを2回に分けるのは「歯周病治療の成果」を確認するため

「治療が目的じゃないと保険が適用できないのはわかったけど、何で、保険の歯のクリーニングは2回に分けるの？1回にまとめてできないの？」

保険の歯のクリーニングはかならず、2回に分けて行われます。2回に分けるのは、歯周病治療の成果を確認する（という名目がある）ためです。

1回目の診察で歯周病の状態を確認して歯のクリーニング（歯石取りを含む）を行ったあと、2回目の診察で1回目の歯のクリーニングによる歯周病治療の成果を確認し、2回目の歯のクリーニングで仕上げの歯周病治療をする…という「目的（名目上の目的）」があるため、保険の歯のクリーニングはかならず2回に分けて行う決まりとなっています。

1回にまとめて欲しい、とご意見をいただくことも多いのですが、保険診療のルール上、保険の歯のクリーニングは2回に分ける決まりがあります。なにとぞ、ご了承いただければ幸いです。

◎保険の歯のクリーニング内容

保険の歯のクリーニングでは以下の2つを行います。

・歯石取り（スケーリング）

・PTC

・歯石取り（スケーリング）

ハンドスケーラーや超音波スケーラーを使い、歯に付着した歯石を取り除きます。歯と歯ぐきの境目にある歯周ポケット内部に歯石が付着している場合はSRP（スケーリング・ルートプレーニング）や歯周ポケット掻把（※）を行う場合もあります。

（※）歯周ポケット掻把（そうは）・・・麻酔注射をして

歯周ポケット内部の歯石を除去するスケーリング。

・PTC

PTC（プロフェッショナル・トゥース・クリーニング）とは、歯科衛生士による歯のクリーニングです。

歯みがきやフロス、歯間ブラシ、ポリッシングブラシを使い、磨き残しがある部分を中心に簡易的な歯の清掃を行います。

PTCの1回あたりの所要時間は10～15分程度です。

■自費の歯のクリーニング

◎「予防」「審美」「治療」を目的に歯のクリーニングを行えます

自費の歯のクリーニングは保険診療のようなルールがありません。

むし歯・歯周病の進行を防ぐための予防目的や、歯の見た目を綺麗にする審美目的で歯のクリーニングを行えます。むし歯・歯周病の治療目的で自費の歯のクリーニングを行うことももちろん可能です。

回数を2回に分けるルールもなく、1回で徹底的に歯の清掃を行えるのが自費の歯のクリーニングの特徴です。

◎自費の歯のクリーニング内容

自費の歯のクリーニングでは以下の2つを行います。

・歯石取り（スケーリング）

・PMTC

・歯石取り（スケーリング）

ハンドスケーラーや超音波スケーラーを使い、歯に付着した歯石を取り除きます。歯と歯ぐきの境目にある歯周ポケット内部に歯石が付着している場合はSRP（スケーリング・ルートプレーニング）や歯周ポケット掻把を行う場合もあります。

・PMTC

PMTC（プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング）とは、歯科衛生士による歯のクリーニングです。

保険診療のルール上、PTCでは使える器具が限られています。自費のPMTCはルールがないため、清掃力の高いラバーカップやラバーチップ、プラークを分解しやすくするパウダー、エアフローなどを使って徹底的に歯を清掃することが可能です。

PMTCでは上記のような器具やパウダー、専用の機械を使い、歯の表面に付着したバイオフィルム（プラークの膜）を徹底的に除去していきます。

PMTCは歯のクリーニングに加え、歯質を強化するためのフッ素塗布を仕上げに行います。フッ素は歯のエナメル質の再石灰化をうながす作用がある成分です。フッ素塗布を行うことでエナメル質のコーティングが強化され、むし歯を防ぎやすくなります（※）。

PMTCの1回あたりの所要時間は30分～1時間程度です。

（※）むし歯の進行を防ぐには、毎日のセルフケアと歯科

医院で受ける定期的なメンテナンスが必要です。

【毎日の歯みがきと歯科医院の定期検診で歯の健康を保ちましょう】

歯の健康を保つには、まずは毎日の歯みがき＋フロス、歯間ブラシを使った歯間清掃をきちんと行うことが大切です。セルフケアに加え、歯科医院で定期検診（検診と歯のクリーニング）を受けることでむし歯・歯周病の進行を防ぎやすくなり、早期治療につながります。

いくつになってもしっかり噛める丈夫な歯を保つため、セルフケア＋プロケアで歯の健康を守りましょう。