おしむら歯科ブログ BLOG OSHIMURA

痛みがなくなる=むし歯が治った? むし歯を放置する危険性


「むし歯が痛かったけど、いつ頃からか、痛みが消えた」

「痛くないということはむし歯が治ったのかな?良かった」


むし歯を放置していると、あるときを境に、スッとむし歯が痛まなくなることがあります。ズキズキと夜も眠れないほどだったむし歯の痛みが消えることで、患者様によっては「むし歯が治った」と勘違いしてしまうケースも。


むし歯の痛みがなくなるのは、危険なサインです。


痛みがなくなる=むし歯が治った、ではありません。


治るどころか、むし歯が悪化して歯の根が膿んだり、あごの骨が溶けるなど、さらに症状が重くなるケースも。


今回は「痛みがなくなったむし歯を放置する危険性」についてお話しします。


■むし歯の痛みがなくなる理由


◎細菌によって歯の神経が死滅すると痛みを感じなくなります

ズキズキと痛んでいたむし歯が痛くなくなるのは、むし歯菌をはじめとする細菌によって歯の神経が死滅するためです。むし歯が歯の神経に達し、歯の神経が細菌に侵されて死滅すると歯の痛みを感じなくなります。


■痛みがなくなったむし歯を放置すると…


◎根尖性歯周炎、歯根嚢胞、骨髄炎などの重い症状に進行することがあります

痛みがなくなったむし歯は「もう治った」と勘違いされがちです。しかし、痛みがなくなる=むし歯が治った、ではありません。


痛みがなくなったむし歯を放置すると歯の根っこの神経が通う根管内部が細菌に感染し、以下を発症することがあります。


①根尖性歯周炎

②歯根嚢胞

③骨髄炎・粘膜の炎症(顎骨骨髄炎、蜂窩織炎、上顎洞炎など)


①根尖性歯周炎

根尖性歯周炎(こんせんせいししゅうえん)とは、歯の根の先(あごの骨(歯が植わっている歯槽骨)に近い部分)が細菌に感染し炎症が起きている状態です。


根尖性歯周炎は歯の神経が死んでいるため、状態によっては痛みを感じないことも。しかし、根尖性歯周炎で骨膜や歯ぐきの粘膜の下に細菌が入り込むと、夜も眠れないほど、歯の根本や歯ぐきが強く痛む場合があります。根尖性歯周炎の進行により、発熱(37~38℃以上)、睡眠障害、食欲不振、全身の疲労感などの症状が起きるケースも少なくありません。


<歯の周りの症状>


・就寝中など、安静時の歯・歯ぐきの強い痛み

・歯ぐきの表面に白いおできのような物ができる(フィステル)


<全身の症状>


・発熱(37~38℃以上)

・睡眠障害

・食欲不振

・全身の疲労感


②歯根嚢胞

歯根嚢胞(しこんのうほう)とは、歯の根の先が細菌に感染し、根の先に、組織から浸みだした浸出液の袋(嚢胞)ができている状態です。


すでに歯の神経が死滅しているため、通常、歯根嚢胞では歯の痛みはほぼ感じません。歯の痛みは感じにくいですが、食べ物を噛んだときに歯ぐきが圧迫されるような痛み(圧痛:あっつう)を感じることがあります。


歯ぐきの圧痛のほか、進行した歯根嚢胞では歯を支える歯槽骨が大きく溶けてしまい、食べ物を噛んだときに歯がグラグラと揺れる場合も。歯槽骨が溶けることで歯ぐきが下がり、歯の根っこの表面(歯の根面)が露出するケースもあります。


<歯の周りの症状>


・歯ぐきが圧迫されるような痛み(圧痛)

患部の歯がグラつく

・歯ぐきが下がり、歯の根面が露出する


③骨髄炎・粘膜の炎症(顎骨骨髄炎、蜂窩織炎、上顎洞炎(蓄膿症)など)

[顎骨骨髄炎]


骨髄炎(こつずいえん)とは、骨の中を通る骨髄というやわらかい組織が細菌に感染して炎症が起きている状態です。


骨髄炎の中でも、あごの骨に炎症が起きるものを顎骨骨髄炎(がっこつこつずいえん)と呼びます。


痛みがなくなったむし歯を放置し続けると根尖性歯周炎や歯根嚢胞が起きる可能性があるほか、歯を支えている歯槽骨やその下にある顎骨(がっこつ)に細菌が達してしまい、顎骨骨髄炎を発症することがあります。


顎骨骨髄炎は無症状の場合もあります。無症状の場合もありますが、通常、顎骨骨髄炎になると以下のような症状が現れ、生活や仕事に大きな支障をきたすケースが多いです。


<歯の周りの症状>


・歯を叩くと歯が痛む

・お口の中が腫れる

・患部周辺の皮膚が腫れる

・患部の歯や周辺の歯がグラつく

・歯ぐきが腫れる

・歯ぐきから膿が出る

・あごの骨が溶ける(あごの骨が溶けて顔の形が変わることも)


<全身の症状>


・発熱(37~38℃以上)

・睡眠障害

・食欲不振

・全身の疲労感


[蜂窩織炎]


蜂窩織炎(ほうかしきえん)とは、皮膚や皮下組織(皮膚のいちばん深いところ)が細菌に感染して炎症が起きている状態です。お口においては、むし歯の放置によって口腔底(こうくうてい:下あごの歯列の内側=舌と歯ぐきのあいだの窪み)の粘膜に炎症が起きる口腔底蜂窩織炎を発症するケースがあります。


口腔底蜂窩織炎になると、以下のような症状が起きることがあります。口腔底蜂窩織炎を放置すると細菌感染が進行し、口腔底が腫れあがって呼吸困難になり命にかかわる場合も。


<歯の周りの症状>


・口腔底の痛み・圧痛

・舌や口腔底が腫れる(症状が進行すると呼吸困難になることも)


<全身の症状>


・発熱(37~38℃以上)

・寒気・悪寒

・ろれつが回らず、発音しにくくなる

・食べ物・飲み物を飲み込みにくくなる

・よだれが出る

・耳の痛み

・首の痛み

・首が赤く腫れる

・全身の脱力感・疲労感

・意識が朦朧とする・混乱する


[上顎洞炎]


上顎洞炎(じょうがくどうえん)とは、上あごの奥歯の上にある上顎洞という空洞部分が細菌に感染して炎症が起きている状態です。


上顎洞は鼻につながっています。鼻につながっているため、上顎洞炎になると膿の混ざった鼻汁がでたり、膿によって鼻が詰まることがあります。


上顎洞炎のうち、放置したむし歯やインプラントなど、歯・歯周組織が原因でひき起こされる上顎洞炎を歯性上顎洞炎と呼び、鼻が原因で起きるものと区別しています。


歯性上顎洞炎になると、以下のような症状が起きることがあります。歯性上顎洞炎の特徴は左右どちらか片方の鼻が詰まりやすくなる点です。鼻が原因で発症する鼻性上顎洞炎では多くの場合、両方の鼻の詰まりが見られます。


<歯の周りの症状>


・歯・歯ぐきの痛み

・噛んだときに歯が痛む


<全身の症状>


・左右どちらか片方の鼻が詰まる

・左右どちらか片方の頬に痛み(圧痛)や違和感がある

・目の下の痛み

・発熱(37~38℃以上)

・頭痛


【むし歯が重症化する前に、歯の痛み・違和感があるときは早めの受診を】


おしむら歯科では根管治療を中心に、重症化したむし歯(C3以上)に対する治療を行っています。


当院で行っている根管治療については、ブログにて詳しくご説明しています。併せてご参照ください。


むし歯・歯周病など、お口の病気は重症化させないことが大切です。今回お伝えしたように、痛みがなくなったからと言ってむし歯を放置すると根尖性歯周炎や顎骨骨髄炎、蜂窩織炎などの重い症状に進行してしまう可能性があります。症状の中にはあごの骨が溶けて顔の形が変わったり、命に関わるものも。


かけがえのない歯を守り、むし歯を進行させないためにも、歯の痛み・違和感があるときはなるべく早めに歯科医院で診察を受けましょう。

おしむら歯科こども矯正歯科クリニック
歯科医師
押村 侑希

⇒院長の経歴はこちら