
▸ 歯磨きをしているのに、子どもの口が臭うのはなぜ?
こんにちは。おしむら歯科・こども矯正歯科クリニック院長の押村侑希です。
お子さんと近くで話したときに、
「朝起きると、口のにおいが気になる」
「歯磨きをしたばかりなのに、まだ口が臭う」
「以前より口臭が強くなった気がする」
と感じたことはありませんか。
子どもの口臭が気になると、「きちんと歯を磨けていないのでは」「胃や身体の病気では」と心配になる保護者の方も多いと思います。
しかし、子どもの口臭は歯磨き不足だけで起こるものではありません。
舌の汚れ、歯ぐきの炎症、むし歯、口呼吸による乾燥、鼻やのどの不調など、複数の原因が考えられます。子どもの口臭に関する研究でも、歯垢や舌の汚れなど、まずお口の中の状態を確認することが重要とされています。
朝だけ一時的ににおう場合と、一日を通して口臭が続く場合では、考えられる原因も異なります。
今回は、子どもの口臭が起こる主な原因、家庭で確認したいポイント、歯科医院を受診したい目安についてご説明します。
- 起床直後の一時的な口臭は、唾液が減ることで起こる場合があります
- 子どもの口臭では、歯垢、歯肉炎、舌苔、むし歯などを確認します
- お口を開けて呼吸していると、口腔内が乾燥して口臭が生じやすくなることがあります
- 鼻づまり、いびき、口呼吸を伴う場合は、鼻やのどの状態も確認が必要です
- 口臭が毎日続く場合や、歯ぐきの出血、腫れ、痛みがある場合は歯科を受診しましょう
- 口臭があるからといって、必ず矯正治療が必要になるわけではありません
▸ 朝だけ口が臭うのは、病気なのでしょうか?
起床直後の口臭は、健康な子どもにも見られることがあります。
寝ている間は、起きているときよりも唾液の分泌が少なくなります。唾液による洗浄作用が弱まり、お口の中の細菌が増えることで、朝は口臭が強くなりやすいのです。
同じように、空腹時や緊張しているとき、水分が不足しているときにも、唾液が減って一時的に口臭が強くなる場合があります。歯磨きや食事、水分補給によってにおいが弱くなるのであれば、生理的な口臭である可能性があります。
一方で、
- 日中も口臭が続く
- 歯磨きをしても改善しない
- 家族以外からも口臭を指摘される
- 以前より急ににおいが強くなった
- 歯や歯ぐきに症状がある
という場合は、お口の中や鼻、のどに原因がないか確認した方がよいでしょう。
▸ 子どもの口臭で考えられる主な原因
1.歯垢や食べ物の汚れが残っている
子どもの歯磨きでは、奥歯の溝、歯と歯の間、歯ぐきとの境目などに汚れが残りやすくなります。
歯垢は単なる食べかすではなく、細菌が集まってできたものです。歯の表面や歯と歯の間に歯垢が残ると、細菌がにおいの原因となる物質を作ることがあります。
特に、歯と歯の間が狭くなっている場所は、歯ブラシだけでは十分に清掃できない場合があります。日本小児歯科学会も、歯と歯の間にはデンタルフロスを使用することを案内しています。
小学校低学年頃までは、子どもだけですべての歯を磨くことが難しいため、保護者による仕上げ磨きも大切です。
2.歯ぐきに炎症が起きている
歯磨きのときに歯ぐきから血が出る、歯ぐきが赤く腫れている場合は、歯肉炎が起きている可能性があります。
子どもの歯周組織の病気では、成人に多い進行した歯周炎よりも、歯垢が原因となるプラーク性歯肉炎が多く見られます。思春期には、ホルモンバランスの変化によって歯ぐきの炎症が強くなることもあります。
歯肉炎は痛みがほとんどないことも多いため、本人が気づかないまま進む場合があります。
次のような変化があれば、歯肉炎を疑います。
- 歯磨きで血が出る
- 歯ぐきが赤い
- 歯ぐきが丸く腫れている
- 歯の根元に白色や黄色の歯垢がついている
- 朝、口の中がねばつく
- 口臭が以前より強くなった
歯磨きを強くするだけでは、かえって歯ぐきを傷つけることがあります。歯科医院で磨き残しの場所と、適切な歯ブラシの当て方を確認しましょう。
3.舌に舌苔がついている
舌の表面についている白色や黄色の苔のようなものを「舌苔」といいます。
舌苔には、細菌、剥がれた粘膜、食べ物の残りなどが含まれています。口臭の原因となる物質は舌の表面で作られることが多く、舌苔は代表的な口臭の原因の一つです。
ただし、舌が少し白く見えるからといって、毎日強くこする必要はありません。
舌を強く磨きすぎると、舌の粘膜を傷つけることがあります。舌苔が目立つ場合は、やわらかい歯ブラシや舌ブラシを軽く当て、奥から手前へやさしく動かします。行う場合も1日1回程度とし、舌に傷や口内炎があるときは控えましょう。
小さなお子さんが嫌がる場合は、無理に舌を磨かず、歯科医院で必要性を確認してください。
4.むし歯や歯の根の感染がある
小さなむし歯だけで、強い口臭が出るとは限りません。
しかし、むし歯が進み、穴の中に食べ物や細菌がたまっている場合や、歯の神経まで感染が進んでいる場合は、口臭の原因になることがあります。
次のような症状を伴う場合は、むし歯や歯の根の感染が疑われます。
- 歯に大きな穴がある
- 食べ物がいつも同じ場所に挟まる
- 冷たいものや甘いもので痛がる
- 歯が灰色や黒色に変色している
- 歯ぐきに白いできものがある
- 歯ぐきから膿が出る
- 顔や歯ぐきが腫れている
歯ぐきに白いできものがあっても、膿が外へ出ていることで痛みが弱い場合があります。
口臭に加えて発熱、広がる顔の腫れ、飲み込みにくさ、呼吸のしにくさがある場合は、歯の感染が広がっている可能性があるため、速やかな医療機関の受診が必要です。
5.口呼吸によってお口が乾燥している
子どもの口臭を考えるとき、歯や舌だけでなく「どのように呼吸しているか」も確認したいポイントです。
普段から口を開けて呼吸していると、唾液の水分が蒸発し、お口の中が乾燥しやすくなります。唾液による洗浄作用が弱くなることで、舌や歯の周囲に細菌が残り、口臭が生じやすくなる可能性があります。
10~15歳の子ども785人を対象にした研究では、口呼吸をしている子どもは、鼻呼吸の子どもよりも口臭を自覚する割合が高かったと報告されています。ただし、これは関連を示した研究であり、口呼吸だけがすべての口臭の原因だと断定するものではありません。
おしむら歯科の院内資料でも、口呼吸によって口腔内が乾燥すると、唾液の働きが十分に得られず、口臭やむし歯、歯肉炎につながる可能性があるという考え方を共有しています。
6.鼻やのどに不調がある
鼻と口はつながっているため、副鼻腔炎、鼻炎、咽頭炎などがあると、鼻やのどからの分泌物が口臭に関係することがあります。
次のような症状を伴う場合は、鼻やのどの状態も確認する必要があります。
- 鼻づまりが長く続いている
- 黄色や緑色の鼻水が続いている
- 口を開けたまま寝ている
- 毎晩のようにいびきをかく
- 朝起きると口や唇が乾燥している
- のどを頻繁に痛がる
- 鼻水がのどへ流れている様子がある
慢性的な鼻づまりがある子どもに、「口を閉じなさい」と注意するだけでは解決しない場合があります。
鼻で呼吸しにくい原因があるときは、歯科だけでなく、耳鼻咽喉科での診察が必要になることもあります。
▸ 「胃が悪いから口が臭う」は本当?
子どもの口臭があると、「胃腸が悪いのでは」と考える方もいらっしゃいます。
しかし、口臭の多くは、まずお口の中に原因があるとされています。子どもを対象とした研究でも、口臭は歯垢、舌、歯と歯の間などの口腔内因子との関連が強いと報告されています。
もちろん、すべての口臭が歯科だけで解決するわけではありません。鼻やのどの病気、服用している薬、全身疾患などが関係することもあります。ただし、全身の病気による口臭は、口腔内の原因と比べると少ないとされています。
まずは歯科でお口の状態を確認し、歯科的な原因が見つからない場合に、小児科や耳鼻咽喉科などと連携して原因を調べる流れが一般的です。
▸ 家庭で確認したい「子どもの口臭チェックリスト」
お子さんの口臭が気になったときは、においだけでなく、次の項目も確認してみてください。
- 朝だけではなく、日中も口臭がある
- 歯磨きをした後も口臭が続く
- 歯ぐきから血が出る
- 歯ぐきが赤く腫れている
- 舌に厚い白色や黄色の汚れがある
- 大きなむし歯や変色した歯がある
- 歯ぐきに白いできものや膿がある
- 普段から口がポカンと開いている
- 睡眠中にいびきをかく
- 朝起きると口や唇が乾燥している
- 鼻づまりが長く続いている
- 食べ物が歯の間によく挟まる
一つ当てはまっただけで病気と決まるわけではありません。
ただし、複数の項目が続いている場合や、口臭が日常的に気になる場合は、一度歯科医院でお口の状態を確認しましょう。
▸ 家庭でできる口臭対策
仕上げ磨きで「歯ぐきとの境目」まで確認する
歯の表面だけでなく、歯と歯ぐきの境目、奥歯の溝、歯の裏側も確認しましょう。
歯ブラシを強く押しつけるのではなく、毛先を歯と歯ぐきの境目へ当て、小刻みに動かします。
子どもが自分で磨いた後も、磨き残しやすい場所を保護者が仕上げ磨きしてください。
歯と歯の間にはデンタルフロスを使う
歯と歯が接している場所は、歯ブラシの毛先が入りにくい部分です。
特に奥歯の間に食べ物が挟まりやすい場合は、保護者がホルダータイプのデンタルフロスを使用すると清掃しやすくなります。無理に押し込まず、歯の側面に沿わせて動かしましょう。
舌は強くこすらない
舌苔が多い場合は、やわらかい歯ブラシや舌ブラシを使い、力を入れずに清掃します。
舌全体を赤くなるまでこする必要はありません。舌が痛い、出血する、口内炎がある場合は中止してください。
水分と食事のリズムを整える
唾液には、お口の中を洗い流し、細菌の増殖を抑える働きがあります。
水分不足や空腹の時間が長い状態では、一時的に口臭が強くなることがあります。規則的に食事をとり、よく噛み、こまめに水分を補給することも大切です。
甘い飲み物を何度も飲ませる方法は、むし歯のリスクにつながるため、日常的な水分補給には水やお茶を基本にしましょう。
においだけを消そうとしない
口臭用のスプレーや香りの強い洗口液を使用すると、一時的ににおいを感じにくくなることがあります。
しかし、歯肉炎、むし歯、口呼吸、鼻づまりなどが原因であれば、においを覆うだけでは根本的な対応にはなりません。
また、小さな子どもは洗口液を飲み込む可能性があります。自己判断で口臭ケア用品を増やす前に、まず原因を確認しましょう。
▸ 歯科医院を受診したい口臭の目安
次のような場合は、小児歯科へご相談ください。
- 口臭が毎日のように続いている
- 歯磨きや水分補給をしても改善しない
- 歯ぐきから出血する
- 歯ぐきが赤く腫れている
- 大きなむし歯がある
- 歯ぐきに白いできものや膿がある
- 歯が変色している
- 口の中がいつも乾燥している
- 口呼吸やお口ポカンが続いている
- いびきや慢性的な鼻づまりがある
口臭が一時的なものか、治療が必要なものかを、ご家庭だけで判断するのは難しいことがあります。
「この程度で歯医者へ相談してよいのかな」と迷う場合も、定期健診の際にお伝えください。
▸ おしむら歯科では、歯だけでなく「呼吸と舌」も確認します
おしむら歯科では、子どもの口臭について相談を受けた場合、においだけを確認するのではなく、
- 歯垢や磨き残し
- 歯ぐきの炎症
- むし歯や歯の根の感染
- 舌苔の付着
- お口の乾燥
- 口唇が閉じられているか
- 口呼吸をしていないか
- 舌の位置や動かし方
- 鼻づまりやいびきがないか
などを確認します。
当院では、歯列だけでなく、呼吸、嚥下、咀嚼、舌位といった口腔機能と、必要に応じて気道の状態を確認することを大切にしています。
口呼吸やお口ポカン、いびき、舌の動かし方などに問題がある場合は、「口腔機能発達不全症」に該当する可能性も考えます。
ただし、口腔機能発達不全症の治療と矯正治療は同じものではありません。日本小児歯科学会も、まずは食べる・話す・呼吸を助けるといった口腔機能へのアプローチを行い、その経過を確認してから、必要に応じて矯正治療を検討することを案内しています。
「口臭があるから矯正治療をする」のではなく、口臭の原因を調べた結果、口呼吸、舌位、歯並び、噛み合わせなどが複合的に関係している場合に、それぞれに必要な対応を考えます。
Q1.朝だけ口臭があります。歯医者へ行く必要はありますか?
A.起床直後だけ口臭があり、歯磨き、食事、水分補給によって弱くなる場合は、寝ている間に唾液が減ることで生じる生理的な口臭の可能性があります。ただし、歯ぐきの出血、むし歯、口呼吸、強い鼻づまりなどがある場合は、一度ご相談ください。
Q2.毎日歯磨きをしているのに、口臭がします
A.歯磨きをしていても、歯と歯の間、奥歯、歯ぐきとの境目、舌などに汚れが残ることがあります。また、口呼吸による乾燥や鼻の不調が関係している場合もあります。磨いている回数だけでなく、磨き残しやお口の機能まで確認することが大切です。
Q3.舌が白いので、毎日強く磨いた方がよいですか?
A.強く磨く必要はありません。舌苔が目立つ場合は、やわらかいブラシを軽く当て、奥から手前へやさしく動かします。1日1回程度とし、出血や痛みが出るほどこすらないでください。
Q4.子どもの口臭は、胃の病気が原因ですか?
A.口臭の多くは、舌苔、歯肉炎、むし歯など、お口の中に原因があるとされています。鼻やのど、全身の病気が関係する場合もありますが、まずは歯科でお口の状態を確認するのがよいでしょう。
Q5.口呼吸を治せば、口臭もなくなりますか?
A.口呼吸による乾燥が口臭に関係している場合は、呼吸状態を整えることで口腔環境が変化する可能性があります。ただし、口臭には歯垢、舌苔、歯肉炎、むし歯など複数の原因があるため、口呼吸だけを治せば必ずなくなるとは限りません。まず原因を分けて確認することが大切です。
Q6.口臭がある場合、矯正治療が必要ですか?
A.口臭だけを理由に矯正治療を行うことはありません。最初に歯や歯ぐき、舌、口腔乾燥、鼻づまりなどを確認します。口呼吸や舌の位置、噛み合わせに問題がある場合も、まず口腔機能への対応を行い、必要性を検討したうえで矯正治療をご案内します。
▸ 子どもの口臭は、歯磨き不足と決めつけないでください
子どもの口臭が気になると、
「ちゃんと磨いていないからだよ」
「口を閉じなさい」
と注意したくなることもあると思います。
しかし、子ども自身が一生懸命磨いていても、年齢的に磨き残しが多いことがあります。また、鼻がつまっているために、本人の意思とは関係なく口呼吸になっている場合もあります。
大切なのは、口臭を叱る材料にするのではなく、身体やお口からのサインとして原因を確認することです。
おしむら歯科では、歯や歯ぐきだけでなく、舌の位置、口唇閉鎖、鼻呼吸、いびきなども確認し、お子さん一人ひとりに必要な対応を一緒に考えます。
「朝だけではなく、一日中口臭が気になる」
「歯磨きをしてもにおいが続く」
「口呼吸や鼻づまりも気になっている」
という場合は、お気軽にご相談ください。
2007年 愛知学院大学歯学部歯学科卒業
2017年 日本成人矯正歯科学会認定専門医コース修了(2年)
2018年 Dr John flutter(ブリスベン開業)診査診断コース修了
2019年 おしむら歯科・こども矯正歯科クリニック院長就任
2020年 愛知県歯科医師会食育推進委員、ユマニテク歯科衛生士専門学校非常勤講師
2023年 愛知県歯科医師会調査室参与
日本成人矯正学会会員
日本摂食嚥下リハビリテーション学会会員
メタルフリー歯科学会 認定医
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