「テレビ番組で歯周病の特集をしていたけど、そもそも歯周病って何の病気なの?」
「むし歯とは違うのかな?」
むし歯は歯に穴が開く、歯が痛くなる、しみるなどイメージしやすいですが、「歯周病」と聞いてもピンと来ない方も少なくありません。
歯周病はとっても怖いお口の病気です。歯周病が進行すると歯を支えている歯槽骨(あごの骨)が溶けて歯が抜け落ちることがあるほか、脳梗塞や心筋梗塞など、全身の健康にまで悪影響をおよぼすケースもあります。
今回は「歯周病」についてのお話です。
目次
■歯周病とは
◎歯のまわりの組織が細菌におかされる病気です
歯周病という名前で気になるのが「歯周(ししゅう)」ですよね。歯周とは、歯(歯の本体)をのぞく、歯の周りの歯周組織を指します。歯周組織には歯ぐきや歯を支える歯槽骨(あごの骨)、歯根を守るセメント質、歯を歯槽骨につなぎ留めている歯根膜などがあります。
[歯周組織]
・歯ぐき
・歯槽骨
・セメント質
・歯根膜
など
歯周病とは、これらの歯周組織がお口の中にひそむ歯周病菌(カビ菌など)によっておかされ、歯ぐきが炎症を起こしたり歯槽骨が溶けてしまう病気です。
◎歯周病は感染症
生まれたばかりの赤ちゃんのお口の中には歯周病菌はいません。はじめての乳歯が生えたあと(生後6ヶ月頃)、ご両親やご家族、お友達からの回し食べや回し飲み、口移し、キスなどが原因で歯周病菌が赤ちゃんのお口の中に感染します。
◎歯周病はどこから発症するの?
歯周病は歯と歯ぐきの境目にある歯周ポケットから病気を発症します。
年齢が若い未成年の方や歯ぐきの健康状態が良好な方は歯周ポケットの溝は深くなく、歯周病菌はあまり中に入り込みません。しかし、加齢や喫煙、歯磨き不足などが原因で歯周ポケットの溝が深くなると歯周病菌が歯周ポケットの奥深くに入り込み、ポケットの中で毒素を出して歯ぐきの炎症を起こしたり歯槽骨を溶かしてしまうのです。
■歯周病にかかりやすい方
歯周病は年齢に関係なく発症する病気です。最近では10代・20代の方の若年性歯周病も増えています。年齢にかかわらず発症する歯周病ですが、一般的には以下のような方が歯周病にかかるリスクが高くなります。
[歯周病にかかりやすい・悪化しやすい方]
・40代以上の中高年世代の方
・喫煙者の方
・歯磨き不足で歯周ポケットに歯石が溜まっている方
・40代以上の中高年世代の方
歯周病は40代以上の中高年世代の方に多く見られる病気です。日本人の40代以上の方の約8割が歯周病にかかっているとされています(※)。
(※)厚生労働省「平成28年歯科疾患実態調査」(2016)より引用。
中高年世代に多い歯周病ですが、40代以上になってとつぜん病気を発症する訳ではありません。多くの場合、子どものうちに歯周病菌に感染し、10年、20年という長い期間をかけて歯周病が悪化した結果、40代以上になってはじめて症状に気づく、というケースが多いのです。
歯ぐきが腫れたり出血する歯肉炎は一過性の単なる歯ぐきの炎症や出血として見逃されがちですが、歯肉炎は初期の歯周病です。歯肉炎は症状が軽く病気と認識されにくいため、歯周病とは気づかずに病気を放置してしまうケースが少なくありません。
・喫煙者の方
タバコに含まれるニコチンや一酸化炭素、タールが歯ぐきにダメージを与えてしまい、歯周組織に栄養が行きわたらくなるため喫煙者の方は歯周病が悪化しやすいです。
・歯磨き不足で歯周ポケットに歯石が溜まっている方
毎日の歯磨きを怠ってしまうと、歯と歯ぐきの境目にある歯周ポケットの溝の中に歯垢(プラーク)が溜まっていきます。
歯周ポケット内部(歯の根面)の歯垢は2~14日間ほどで石灰化して歯石になります。歯石が歯につくと、ご自身での除去はむずかしいです。
歯周ポケット内部に歯石が溜まると歯石の表面のざらざらした小さな穴の中に歯周病菌などの細菌が棲み着きます。歯石の表面の穴はとても小さく、歯ブラシでは穴の内部にひそむ細菌は落とせません。
そして、歯周ポケット内部の歯石に棲み着いた歯周病菌が増殖して毒素を出し、歯周病の症状を悪化させてしまうのです。
■歯周病を放置すると…
◎歯槽骨が溶けて歯が抜け落ちる
歯周病の怖いところは症状を感じにくい点です。特に初期の歯肉炎のうちは自覚症状がほとんどなく、自分ではなかなか気づけません。自覚症状に気づかず歯周病を放置していると、静かに病気が進行していきます。気がついたときには重度の歯周病になっていて歯槽骨の大部分が溶けてしまい、歯がグラグラとゆれたり自然に歯が抜け落ちる…というケースが少なくありません。
◎脳梗塞や心筋梗塞などの全身性の病気や症状をひきおこす原因になる
歯周病はお口だけの病気ではありません。
重度の歯周病を放置すると、血管の中に入り込んだ歯周病菌により以下のような全身性の病気や症状をひきおこす可能性があることが報告されています(※)。
・脳梗塞
・心筋梗塞
・肺炎(誤嚥性肺炎)
・糖尿病の症状悪化
・不妊症
・低体重児出産
・早産
・流産
(※)日本歯周病学会刊行「歯周病と全身の健康」より引用。
【毎日の歯磨きと定期検診で歯周病の早期発見・早期治療につなげましょう】
今回は「歯周病」のお話をさせていただきました。進行別の症状など、歯周病について詳しくはこちらの記事でもご説明しています。合わせてご参照ください。
歯周病を悪化させないためには、毎日の歯磨きをしっかり行うことが大切です。歯磨きの際は毛先の細い歯周病用の歯ブラシを使い、歯周ポケット内部の汚れをかきだしてあげることで歯周病の悪化を防ぎやすくなります。
毎日の歯磨きに加え、歯科医院で受ける定期的な歯周病メンテナンスも重要です。メンテナンスでは歯周病の有無を確認し、お口のクリーニング(歯の清掃&歯石取り)を行います。診察の結果、治療が必要な場合には歯周組織の状態に合わせて歯周病治療を進めていきます。