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あごから音がする?その症状、「顎関節症」かも



「あごを開けたとき、「パキッ」「クチャッ」て音がする…」

「あごを動かすとカクカクする…」

「口を開けにくい…」


こんな症状、ありませんでしょうか?もし、上記のような症状がある場合は顎関節症(がくかんせつしょう)の可能性があります。


顎関節症はストレスなど、何らかの原因によりあごの関節がずれて音がしたりカクカクする疾患です。顎関節症を放置しているとあごの痛みが出てきたり、重症になると少ししか口を開けられなくなることもあります。


今回はあごから音がする・あごがカクカクする「顎関節症」について、症状・原因・治療方法・注意点をご説明します。


■顎関節症の症状


◎「あごを開けたときに音がする」「あごを動かすとカクカクする」「顎関節周辺に痛みを感じる」などの症状が現れることがあります

顎関節症になると、以下の症状が現れることがあります。


・あごを開けたときに「パキッ」「クチャッ」と音がする

・あごを動かすとカクカクする

・顎関節周辺に痛みを感じる

・顎関節が痛くて少ししか口を開けられない


■顎関節症であごから音がしたりあごがカクカクする理由


◎ストレスやあご周りの筋肉の緊張など、何らかの原因により顎関節の関節円板がずれると顎関節症を発症しやすくなります

顎関節はあごの付け根にある関節円板(かんせつえんばん)という軟骨が上下のあごのあいだにあり、クッション+潤滑の役割を果たしています。関節円板というクッション材によってあごがスムーズに動き、痛みなくあごを開け閉めできるのです。


ところが、ストレスやあご周りの筋肉の緊張など、何らかの原因により顎関節の関節円板がずれることがあります。関節円板がずれるとあごを正しく開け閉めできなくなってしまい、口を開けたときにあごから音がする、あごがカクカクするなどの顎関節症の症状が現れやすくなります。関節円板は前にずれることが多く、後ろにずれることはあまりありません。


■顎関節症をひき起こす可能性がある原因


◎ストレス、歯並び・噛み合わせの乱れ、顎関節にかかる過度な負荷など、さまざまな原因があります

顎関節症は原因の特定がむずかしい疾患です。以下のようなさまざまな原因が絡み合って顎関節症がひき起こされると考えられています。


・ストレス

・歯並び・噛み合わせの乱れ

・あごを強くぶつけるなど、あご周りの怪我

・頬杖、間違った噛み方などの悪い癖

・歯ぎしり・食いしばりの癖

・うつぶせ寝

・猫背

・よく硬い物を食べる

・食べるときに口を大きく開ける癖がある


原因はさまざまですが、これらの原因によってあご周りの筋肉が緊張したり顎関節に過度な負荷がかかった結果、顎関節の関節円板がずれてしまい顎関節症をひき起こすことがあります。


■顎関節症を治すには?


◎歯科、または、口腔外科で主に治療を行います

顎関節症は歯科、または、口腔外科で主に以下のような治療を行います。ただし、顎関節症はストレスなどさまざまな原因が存在するため、ケースによっては心療内科や精神科での治療が必要になる場合があります。


1.スプリント療法(マウスピース)


さまざまな原因はありますが、顎関節症は顎関節に過度な負荷がかかることによってひき起こされる疾患、という点ではどの原因も同じ終着点(過度な負荷による関節円板のずれ)にたどり着きます。


過度な負荷から顎関節を守るため、歯科での顎関節症の治療においてはスプリントというマウスピースを使って顎関節にかかる負荷をやわらげる「スプリント療法」を行うのが一般的です。


スプリント(またはナイトガードやバイトプレート)は患者様の歯並びやあごの形に合わせて作られます。オーダーメイドで作られたマウスピースを就寝時に装着して歯ぎしり・食いしばりによる顎関節への負荷をやわらげ、顎関節症の症状の緩和につなげます。


2.咬合調整


咬合調整とは、歯の噛み合わせ面のエナメル質を少しだけ削って噛み合わせを調整する治療です。


咬合調整により噛み合わせを正常化することで顎関節にかかる負荷を均一化し、顎関節症の症状の緩和につなげます。咬合調整とスプリント療法を併せて行うこともあります。


なお、エナメル質を削ると聞いて「歯が痛むのでは」、と心配されるかもしれませんが、エナメル質は約1~2mm(奥歯の噛み合わせ面)の厚みがあり、咬合調整で削るのは0.数mm程度です。歯の健康に影響が出るほどエナメル質を削ることはありませんのでご安心ください。


3.歯科矯正


歯並び・噛み合わせの乱れが原因で顎関節症がひき起こされている可能性があるときは歯科矯正による治療を行います。治療では患者様のご希望や歯並び・噛み合わせの乱れ方に合った方法で矯正を進めていきます。


4.薬物療法(鎮痛剤、ボトックス注射)


顎関節症であごの痛みが強いときは痛み止めの鎮痛剤(内服薬)を処方する場合があります。


鎮痛剤のほか、あご周りの筋肉の緊張によって顎関節症がひき起こされている可能性があるときは弱毒化したボツリヌストキシンを咬筋に注入するボトックス注射を行い、あご周りの筋肉を緩ませて症状の緩和につなげる方法もあります。


5.あご周りの筋肉のストレッチ・マッサージ


あご周りの筋肉の緊張によって顎関節症がひき起こされている可能性があるときは歯科医師があご周りの筋肉のストレッチ・マッサージを行い、症状の緩和につなげる場合があります。


手技によるストレッチ・マッサージのほか、症状を緩和させるためにあごの筋肉に電流を流す治療を行うこともあります。


6.お口周りの筋肉トレーニング(口腔筋機能療法(MFT))


片側の歯ばかりで噛む、前歯をあまり使わないなど、誤ったお口の使い方が原因であご周りの筋肉や顎関節にアンバランスな負荷がかかり、顎関節症を発症することがあります。


誤ったお口の使い方が原因で顎関節症がひき起こされている可能性があるときは、口腔筋機能療法(MFT)などのお口周りの筋肉トレーニングを行うことで正しいお口の使い方が身につく効果を期待できます。


正しいお口の使い方が身につくことであご周りの筋肉や顎関節にかかる負荷の正常化につながり顎関節症の症状の緩和が期待できるほか、誤ったお口の使い方が原因で起きる顎関節症の再発を防ぎやすくなります。


7.外科手術


生まれつき顎関節がずれている、または、口呼吸などの悪い癖が原因であごが健全に育たなかった場合はあごの骨格異常が生じることがあります。


あごの骨格異常が原因で顎関節症がひき起こされている可能性があるときは外科手術(あごの骨切り手術など)が必要になるケースがあります。手術は口腔外科や形成外科で行われます。


◎ストレスが原因の顎関節症は心療内科や精神科での治療が必要になることも

ストレスによってあご周りの筋肉が緊張することで顎関節症を発症するケースがあります。


ストレスにより顎関節症を発症している可能性があるときは、ストレスをひき起こす原因を探り、ストレスを軽減するために心療内科や精神科での治療が必要になることも。


心療内科や精神科の治療では精神安定剤の処方のほか、症状によっては臨床心理士によるカウンセリングを行い、ストレスの緩和・軽減につなげます。


ストレスに加え、歯並び・噛み合わせの乱れなどお口周りの異常が重なって顎関節症がひき起こされている可能性があるときは歯科・口腔外科と心療内科・精神科、両方での治療が必要になるケースがあります。


■顎関節症の注意点(予防の仕方)


◎注意点を守ることが顎関節症の予防(再発の予防)につながります

顎関節症は原因を探り、原因に合わせて適切な治療を行うことが大切です。しかし、誤ったお口の使い方や頬杖、うつぶせ寝など悪い癖や習慣があると治療を行っても癖によって顎関節症が再発してしまうことがあります。


顎関節症にならないようにする、および、顎関節症の再発を防ぐには以下の注意点を守って顎関節に過度な負荷がかからないように気をつけることが重要です。


1.起きているときに歯ぎしり・食いしばりをしないようにする

(就寝中の歯ぎしり・食いしばりはご自身で止めるのはむずかしいため、スプリントで歯をガードする)

2.硬い物を食べすぎない

3.口を大きく開けて食べない

4.頬杖やうつぶせ寝など、顎関節を圧迫する癖をやめる

5.片側の歯ばかりで噛む、前歯のみで噛むなどの誤ったお口の使い方をやめる

(ご自身でやめるのがむずかしいときは歯科医院で口腔筋機能療法(MFT)などの治療を受ける)

6.お口を閉じ、姿勢を改善する

(猫背にならないようにする)

7.できるだけストレスをためないようにする

(小さなことは気にしない、睡眠時間を長く取る、趣味やスポーツで気晴らしをする、など)


【顎関節から音がする・あごがカクカクするときは当院までご相談ください】


顎関節症はさまざまな原因によってひき起こされる疾患であり、原因の特定に時間がかかることがあります。


原因を突き止め、それぞれの患者様に合った適切な治療を行うためには、まずは歯科医院で診察を受けることが重要です。歯科医院で診察を受けることで歯並び・噛み合わせの乱れや誤ったお口の使い方など、お口周りに原因があるのか、お口周り以外に原因があるのかを特定しやすくなります。


顎関節から音がする・あごがカクカクするなどの症状があるときはおしむら歯科までご相談ください。診察では歯科医師が症状を確認し、顎関節症の原因がお口周りにあるのかを精査した上で治療方針、または、見解をお伝えします。精密検査の結果、顎関節症の原因がお口周りにあると考えられる場合は症状に合わせてスプリント療法や咬合調整、歯科矯正などの治療を進めていきます。


おしむら歯科こども矯正歯科クリニック
院長
押村 侑希

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