こんにちは。おしむら歯科 院長の押村侑希です。
今回は、神経などで構成される大切な歯の組織(神経組織)、「歯髄(しずい)」のお話をします。
主に、進行したむし歯に対する治療などでは、歯髄を抜くことがあります(=抜髄(ばつずい))。歯医者さんで「歯の神経の治療を行います」と言われ、抜髄処置を受けたご経験がある方も多いのではないでしょうか?
ご経験がある方も多い抜髄ですが、歯髄を抜くと、歯がもろくなってしまうのです。
目次
■歯髄を抜くと歯がもろくなる理由
◎歯髄を抜くと歯に血液が供給されなくなり、歯がもろくなっていきます
歯髄を抜くと歯がもろくなるのは、歯に、栄養を含んだ血液が供給されなくなるためです。
歯髄の中には、
-
歯の神経
-
歯に栄養を送るための血管
-
免疫機能の役割を担うリンパ管
などが通っています。歯の中にある歯髄の血管を通じて、歯に血液が送られているのです。
血液に含まれるカルシウムやたんぱく質、ビタミン(A、C、D)などの栄養により、歯は丈夫さを保っています。
上記の理由により、むし歯治療などで歯髄を抜くと、歯の中の血管も取り除かれた状態に。歯の中の血管がなくなると歯に血液(歯の栄養)が供給されなくなり、歯がもろくなっていきます。
例えるなら、歯髄を抜いた歯は水や二酸化炭素(木にとっての栄養)が送られなくなった木のような状態です。水や二酸化炭素が送られなくなると木は光合成ができず、枯れていきます。
◎歯髄を抜いた歯は「歯根破折」に要注意
むし歯治療などで歯髄を抜くと、歯がもろくなります。
歯髄を抜いた歯はもろく、歯(歯冠&歯根)が割れたり折れやすくなっている状態です。
歯根が割れたり折れることを「歯根破折(しこんはせつ)」と呼びます。歯根破折は歯を失う原因の第3位(約18%)であり、主に中高年の方に歯根破折が起きるケースが少なくありません(※)。
(※)公益財団法人8020推進財団
「第2回 永久歯の抜歯原因調査」(2018)
より引用。
若い頃、または、数年~10年以上前に歯髄を抜いた歯に少しずつダメージが蓄積していき、中高年になって歯根が割れたり折れることが少なくありません。
歯根が破折すると、多くの場合、抜歯になります。歯根破折は接着治療が難しく、歯を残せないことが多いです。
難しい歯根破折の治療ですが、歯根の割れ方によっては接着剤を用いて破折箇所をくっつけることで歯根を残せるケースも。
歯根破折で抜歯した後は、抜いた歯の箇所をインプラントなどの補綴治療で補う形になります。
■歯根の大切さ
◎歯髄を抜いた後、根管治療を行うことで、ご自身の天然の歯を残す可能性を高められます
歯にとって重要な歯髄ですが、進行したむし歯などが原因で歯髄が細菌感染を起こしている場合は、歯髄を抜かなければなりません。
歯髄を抜かないと、歯根を含む歯の組織全体が細菌に侵されやすくなります。歯髄が細菌に侵された状態を放置すると、歯髄のみならず、歯全体がぼろぼろになって歯を残せなくなるおそれも。
上記の理由により、通常、進行したむし歯に対する治療では抜髄処置を行います。
抜髄処置により歯の歯冠部(しかんぶ:歯茎から上の歯の部分)の歯髄を除去した後は、根管治療(こんかんちりょう)を実施します。
根管治療とは、歯根部(しこんぶ:歯の根っこ)の歯髄が通う根管の内部をお掃除(=歯根部の抜髄)し、綺麗にしていく治療です。
歯髄を抜いた後、根管治療を行うことで、ご自身の天然の歯を残す可能性を高められます。
歯を残すために行う根管治療については、ブログにてご説明しています。今回の記事と併せてご参照いただければ幸いです。
【歯を長持ちさせるために「セルフケア」&「プロケア」を継続しましょう】
根管治療は歯を残すための重要な治療です。重要な治療ですが、ベストは、根管治療が必要になる状態にまでむし歯を進行させないこと。
むし歯、および、歯周病の進行を防ぐためには、ご自身で行う毎日の歯磨き+歯間清掃が基本のケアになります。
基本のセルフケアに加え、歯科医院で定期的に検診を受けることで、ご自身では落とし切れない歯垢・歯石を除去できます。定期検診により、むし歯・歯周病などのお口の病気や異常の早期発見・早期治療にもつなげやすくなります。
大切な歯・歯周組織を長持ちさせるために、毎日のセルフケアをしっかり行うと共に、歯科医院で定期的に検診を受けましょう。